格組



格組

格組とはそれぞれの動詞が取る格の組み合わせである。言い換えれば動詞となる述語が取る必須項である
たとえばbad-eは「叩く」であるが、叩く動作には「叩く人」と「叩かれる物」が必要で、主格と対格が必要である
こういった最低限必要な格が何であるかというのが、その動詞の格組である
したがってbad-eの場合、格組はulが動作主でonが対象になる

動詞は格組を持つ。アルカの格組は、大まかに4つの種類に分けられる

1 ul+on+(al/il/ok/kon/ka)
 ulはonを~する。括弧内は必須項でなく、随意に付け加えられる。つまり、後にalやokなどを付け足せる
 [ova]
 an ku-a tu (そのことを言った)
 an ku-a tu al la (そのことを彼に言った)

2 ul+on(onが代替格)
 1と同様だが、onが他の格の代替になっている
 [ova]
 an ke-a koi (あそこに行った)
 an ke-a koi ok la kon lop (私は彼と電車であそこへ行った)
 ti xa-a ra? (君は家にいたの?)
※koiは「あそこ」という場所なので、本来は場所格のkaを取り、ka koi(場所格+名詞)になるはずである
だが、ke-e(行く)という動詞の性質上、onになるのは「場所」に決まっている。よってonがkaの代替格となる
xa-e(居る)も同様に場所をonに取る

onがkaの代替になるのはなぜか。それはonは省略できるがkaは省略できないためである
省略が効かないkaを必須項にするより、省略可能なonを必須項にしたほうが労力が少ない

尚、強調用法として代替格が元の格に戻ることがある。下記は家という場所を強調した言い方である
 [ova]
 ti xa-a ka ra?(君は家に居たの?)

3 ul on(onは再帰) 
 ulが~する。onはulと同一、つまり再帰の場合。このときonにはorという再帰名詞が来る
 ちょうどフランス語のse coucher(自分を寝かせる→寝る)と同じタイプである
 仏語ではseは省略しないが、アルカのorは省略するのがふつうである
 尚、再帰動詞は姿勢動詞などに多い
 [ova]
 an skin-in (or) (私は座っている←私は私自身を座らせている)
 an kond-a (or) al lop (電車に乗った←私は私自身を電車に乗せた)
 尚、onが必ず再帰である必要はない。私は彼を座らせたという場合、an skin-a laといえば良い。この場合、onは再帰ではない

4 ul onがem 
 ulもonも4人称emである動詞の格組。自然現象に多い
 英語のIt rainsやフランス語のIl pleutのような形式主語を取らない
 中国語の下雨のように、動作の方向性を指す語と共起させるということもない
 [ova]
 esk-ip (雨が降りそうだ)
 teez-a (風が吹いた)
 この格組も、厳密にいえばul,onにem以外を入れられる。すると、ulがonに雨を降らせるとか風を吹かせるという意味になる
 たとえば天気を司る神kleevelがulになり、降られる場所が街や人という表現が可能である。ただ、これは詩的な表現でしかない
 [ova]
 kleevel esk-a arna(クレーヴェルがアルナに雨を降らせた→アルナに雨が降った)

以上、おおまかな格組を述べた
共通して言えることは、基本的にどの動詞もul,onの2項を取れるということである
その後に他の格を取るかは任意である
代替格を取る動詞だとしても元の格にすることができる
再帰動詞といってもor以外のonを取れる
自然現象といってもやはりul,onが取れる
なので、どの格組であってもul,onの2項を取ることは間違いない

したがって、アルカには自動詞・他動詞の差がなく、他動詞しかない
生まれるとか死ぬという動詞でさえ、ulが死ぬ人でonがその様態を取るので2項述語であり、形式的に他動詞になる
必ず2項述語になるので、少なくとも動詞の自他を覚える必要はない
また、述べる必要がない格は自然現象の動詞のように省略できるので、運用時も便利である

全ての動詞の格組を覚えずとも良い
自然現象だとか姿勢動詞だとかいった分類に大きく分けてあるので、同じタイプの動詞には同じ格組を当てはめれば良い
英語ではwatch,seeは他動詞だが、lookはatを取る。また、hearはそのままで良いが、listenはtoを取る。
同じタイプの動詞なのに英語では格組が異なる。この煩雑さはアルカにない
また、marryは他動詞なのでmarry withは誤り――といった受験に頻出するような動詞の自他の問題もない