アルバザードの風土



以下はアシェット保管のarbaxeltを抄訳したものから引用した文です。
『紫苑の書』を読むときの世界観の参考に、と思いました。
小説では紫苑の視点でしか世界が映らないため、紫苑の目が気付かないところは一切述べられません。
なので補足として上げておきます。


 アルバザードはアトラスの中心国家であり、最大の軍事力と経済力を有する。
ここではアルバザードの首都であるアルナを中心に述べる

 アルバザードは北緯四十~六十ほどのところにある。
アルカット大陸アンシャル地方に位置する国で、南はテージュ海に面し、それ以外は地続きになっている。
全体として平坦な低地であり、海面から二百mほどのところにある。山は少なく川が緩やかに流れている。
プレート面の境界にないため、地震も少ない

 アルナはテージュ海から北に行ったところで、北緯五十度ほどのところにある。 アルカット大陸の西端に近い場所に位置している

 テージュ海は偏西風の転向力により南西風が吹いているが、アルバザードに入ったところでは北東風が吹いている。
海と陸の比熱差によって、夏はテージュ海の冷たい空気が偏西風に乗るので冷涼である。
冬はテージュ海の暖かい空気が偏西風に乗るので温暖である。いずれにせよテージュ海の湿った空気が流れるため、年間を通じて乾燥しない

 テージュ海から大陸に風が入ってくるため、舟で沖に漕ごうとすると自然と引き戻され、そのことが漁業の発展を妨げた原因の一つである。
その反面、沖へと流されないので遊泳には向き、安全である。風力は年間を通して穏やかで、台風は発生せず、大風が偶にある程度である

 アルバザードの気候は西岸海洋性気候区である。テージュ海近辺はCfc区であるが首都アルナの近辺はCfbである。
したがってアルナは年中多雨で、最も暖かい月の平均気温は二十二度以下で、月平均十度以上の月が少なくとも四ヶ月ある気候区である

 アルナは全体的に暖かく、気温の変動も激しくない。平均気温の最も高い月と低い月の差、即ち年較差は十度強である。
最も高い月が二十度弱であり、最も低い月が五度ほどである。また、その日の最高気温と最低気温の差である日較差も小さい

 降水は平均して雨があり、春夏に最大値を取る。とはいえ降水量は月ごとに変化があまりなく安定している。
年間降水量は八百mmほどであるが、降水量の月ごとの較差は十mm程度と極めて安定している

 自生する植生は主なものが常緑針葉樹林と落葉広葉樹林の混合である。
アルバザードに自生する植生の種類が少ないため、輸入した植物が多く育てられている。
レイユ以降は本来アルバザードになかった植物もふつうに見られる

 土壌は基本的に褐色森林土であるが、冷涼かつ分解しにくい樹種の下ではポドゾルが見られ、灰色の土が見られる。
降水が確保できるところは土壌が中性か弱酸性だが、降水量が少ないところでは土壌は中性か弱アルカリ性である

 伝統的な生活手段は半農半牧である。農業では主に小麦を作る。アルナでは主に小麦が作られた
 アルバザードの北部にある大都市アルシアやアルバザードの北国ケートイアでは大麦が良く取れ、ビールが豊富である

 一方、テージュ海に面する大都市であるカテージュは地中海性気候であり、ここでは果樹園が多く、オレンジやオリーブ、ブドウなどが栽培される。
アルナでも比較的少数であるがこれらが栽培された。ブドウからはワインが作られ、ここでは良く飲まれる
 アルナでもこれらの影響によってワインとビールが多飲される

 ところが、アルバザードの土壌は地味が少ないため、小麦の連作は行えない。
農業だけでは十分な食糧を確保できないため、牧畜も行われた。牧畜に適した家畜は牛や豚である。
牛は肉牛や乳牛としての価値があり、更には農耕用としても使われた。また、牛を利用した酪農も行われていた
 一方、漁業はあまり行われていない。カテージュでは多少の漁業が行われているものの、基本的にテージュ海は肥沃でないため、漁業は発達していない