メテ・ルティア方言



神話上、アルカは惑星アトラス全域で使用されます。星の共通語です。とりわけアルバザードのアルカが世界の中心です。
アルカには方言があります。メテ方言とルティア方言が主たるものです。
方言は現地で使われますが、現地人は共通語としてのアルバザード語を話すことができるという設定です。

架空の惑星アトラスにある3大国はアルバザード・メテ・ルティアです。

アルバザードは『紫苑の書』の舞台となった最強国家です。
ヨーロッパ、とりわけフランスがモデルになっていると思われます。

メテは漠然と東南アジアからインド、中国辺りがベースとなったと思われる国です。
地球と違って随分大国です。中東とアジアの混ざった一風変わった文化が設定されています。
メテの方言が声調を持つのは中国語の影響ではないでしょうか。

ルティアは北米~カナダに当たる国と見てください。
ただ、ユーラシアと概ね繋がっています。地球でいうとアラスカも含むことになります。
アトラスの陸地の配置は地球に似ていて理解に助かります。
ルティアは魔法大国です、魔法が色濃く残る不思議な国としてしばしば書かれます。
メテが異国情緒たっぷりに書かれるのに対し、ルティアは綺麗な不思議さを持って描かれます。

<メテ方言>

メテ語は言い換えれば「声調アルカ」です。

声調は4声まであります。
中国語と同じです。但し、3声は曲声でなく低声です。

1声は高で、高く平ら。2声は昇で、低いところから高いところへ。
3声は低で、低く平ら。中国語の3声は4声の中で一番難しく、3声+3声は2声+3声になったりと例外が多い。
そう考えると3声が曲声でないのは日本人や西洋人にとって易しいと思われます。
4声は降で、高いところから低いところへ。
高い順から低い順へ高・昇・低・降となっています。

また、声調がない単語もあります。いわゆる軽声ですが、アルカでは無声調といいます。 無声調には声調記号を付けません。

声調記号は母音の上につけます。中国語と違って2重母音でも最初の母音に記号を付けます。
1,2,4声は中国語と同じです。3声はウムラウト記号を使います。母音の上に横並びの黒点2つです。

メテ語の声調は音節の単純化と語末子音のヴァリアントの減少が理由で起こりました。
まず語末有声音が無声音に同化する過程で3声ができました。その後高低差がある2,4声が生まれました。
後にメテ国の召喚省がメテ語をまとめ、神に位相としての認定を受けたという設定です。
音節はCV、CVC、CVVCなどですが、VVを単に二重母音と見れば、要するに「CV(C)」という単純な開閉音節しか持ちません。

アルカの子音は20ですが、半子音y,wは語末に来れません。これはメテ語も共通語(アルバ語)も同じです。
よって語末に来る子音は18ですが、実はメテ語はこれが更に少なくなります。

まず、語末のhは消失して1声化します。したがって法時相詞が1列まるまる消えます。

例:xah→xa1

また、語末で有声子音は無声化します。ゆえにdはtになり、gはkになります。
鼻音はnに同化します。つまりmはnになります。
l,r,cはアルバ語でも3兄弟として同化しやすいですが、メテ語の語末ではlに一本化します。

例:kad→kat kom→kon ac→al(つまり命令の時相詞が消失)

したがってdはtに対する異音になるわけです。同じくc,rはlの異音です。

異音を除いた結果、語末に現われる子音はt,k,x,s,n,f,p,lの8種です。アルバ語より10個減りました。
因みに語末以外は消えた10個の子音も現われます。それはアルバ語と同じです。jetがxetになることはありません。

声調

・元々その子音で終わるもの=1声。katは元々tで終わっているので1声。したがってkat→kat1

・異音で終わるもの=3声。kadはtの異音です。なのでkatに変えて3声にする。
 したがってkad→kat3。同じくsec→sel3
 これは理に適っています。元々アルバ語では有声子音で終わる場合、前の母音は長く低くなりますから。
 それでメテ語ではまず始めにこの声調が発生しました

・CVCCのように語末が子音連続しているもの。これは2つに分かれます。
 CVCの次の子音が何であるかを見ます。CVCCCだろうがVからみて2個目の子音を見ます。
 その子音がt,s,n,pなど前寄りのものであれば2声に。
 その子音が2声に比べてk,x,l,fなど後ろ寄りであれば4声に。
 したがってpaxt(光沢)はpax2になります。pask(過程)はpas4になります。
 いうまでもなく同音異義語が増えます。

・語末子音がφの場合、つまり開音節の場合ですが、無条件で4声になります。
 luやtiは4声です。確かにアルバ語の発音が4声風になっているので、そこからの流れです。

・音節頭の子音連続について。CCVCのような単語ですが、CVCVCに分割します。
 始めのVはシュワーになり、声調はありません。シュワーはqで転写します。
 たとえばspatは「sq.pat1」と区切れます。

・長音は文字の上で単音に変化します。cuukiiteはcu4ki4te4になります。

・機能語や接辞は無声調になります。格詞、接続詞、時相詞。内容語からは純詞がエントリーします。
 それ以外はanのような代詞だろうがetのような繋辞だろうが規則的に声調を持ちます。

動詞の発音

アルバ語では時相詞にアクセントがきますが、メテ語では時相詞は無声調です。
時相詞は動詞語根の声調が終わった段階の声の高さのまま発音されます。
繰り返しますが時相詞そのものは無声調です。時相詞の前に来る語の音の高さをそのまま継承するだけです。
in-(見る)は1声ですが、in-eは「イネ(高高)」のように発音されます。京都弁に近いです。

音調

2声が上昇調なのでアルバ語のイントネーションは著しく異なります。
クーノは疑問文で使われ、テンペラは感嘆文で使われますが、これらが語音調ではなく文音調だということがアルバ語以上に明示されます。
とはいえ上昇調を疑問にすると2声と間違えやすいのが現実。そこで、メテ語ではきちんと疑問文末にmiaを置きます。

関係詞

関係詞はありません。全て接続詞のeで繋ぎます。

アルバ:lu in-a fian en sont-i kets(彼は猫を撫でる少女を見た)
メテ語:lu4 in-a1 fian1 e sont-i1 ket2


<ルティア方言>

次はルティア国及びその周辺で使われるルティア方言について。
アルバ語の面倒な部分を削ぎ落とす一方で、過合理を排他するために迂言法を取り入れた方言です。

音声については語末のガタラルな摩擦音が無くなるなどの変化で神秘性を表現しています。
具体的には語末のh音が消失し、息漏れに変化します。
また、cの震え音は弾きの弱い弾音になっています。

ルティア語はメテ語と比べて文法の違いがメインです。

・関係詞がない。メテ語と違ってeではなく、tie~tunのtieを使う。
 fian en san-e kets(猫が好きな少女)=fian tie san-e kets
 fian un an in-a(私が見た少女)=fian tie an in-a

・数字の読み方がメルの数え方ではない。十はtoo(日本語由来ではなく古アルカの10)、百はgal、千はten、万はsen。
 これらは全て古アルカで使っていた語。1'1234はsententagalvitoovaと読む。
 sen,tenの前にkoが来ないので日本語読みとは異なる。若干日本語より便利。
 中国語の零のような特殊な読みはない。

・n対語が最小対語の聞き違いを避けるために迂言法を取っている。

 手順
1:アプラウトする幹母音をn対語から取り出す。たとえばetiならiを取り出す。
2:取り出した母音にlを付ける。たとえばiを取り出したらilにする。
3:こうしてできた語を接頭辞として語頭に付ける。たとえば完成したilを元のetiに付けてiletiとする。

 pa,piは単体では右・左である。上下を区別できない人はまずいないが左右は間違えやすい。
 ただでさえ左右は人間にとって間違えやすいのに、語形が似ていては絶望的だ。
 そこでルティア語では迂言法を取ることによって左右の聞き違いを減らしている。

 2対の場合、aavet,oovetはそのままの形を取りやすい。kotはkotで、paはpaのままになる。
 iivet,eevetが迂言法を取りやすい。したがって右はpaで、左はilpiとなる。
 アクセント位置も綴りも同じなので文脈で判断するが、右と混同するよりは良い。
 3,4対の場合、aavetは元の語形を取りやすい。その他の対語がileti、oleto、eleteなどと変化する。
  
 アプラウトする母音と接頭辞が母音調和しているのに、アプラウトする母音は最後の音節にあるから距離が遠い。
 そのせいでウラル・アルタイ系の母音調和は実現しない。
 奇妙な遠距離母音調和といったところか。いや、母音照応といったほうが適切だろう。
 但しn対語が1音節語の場合、接頭辞とアプラウト部分が連続するので母音調和が成立する。
 pa,kotなどは母音調和が成立し、etaなどは母音調和が成立しない。

 因みに、これらn対接頭辞は随意に付けるもので、piのままでも良い。そうでないと合成語が無駄に長くなる。
 特に短い語形のn対語に接頭辞が付きやすい。また、aavetにal-を付けることも勿論可能だ。alpaのように。

 n対接頭辞を付けるだけだとn対接頭辞の母音間で聞き違いが起こる。
 alpa,ilpaのようにしてしまうとa,iの違いしかないのでアルバ語のn対と変わらない。聞き違いは減らない。
 だが接頭辞が付いた上に幹母音もアプラウトすればalpa,ilpiになる。
 最初の母音が何対目であるか示す予告となっているので、接頭辞のほうが接尾辞より識別に役立つ。
 ソノリティの高い母音を2回利用することで、迂言ではあるが、大きなヘッジないしバッファを作っている。

以上がルティア方言の主な文法上の特徴です。