文化・風土による分類
言語は文化と風土から影響を受ける。もしこの2つがなかったら、語義や語法を作れない単語が出てしまう。たとえば日本語が米と稲を分けるのは稲作文化を前提としている。同時に稲作文化を支える日本の風土も前提としている。このように、言語は文化と風土がないと定まらないことがある。
これは下位概念の人工言語にもいえることである。人工言語は固有の文化・風土を持たねば、自動的に非固有の文化・風土を持つ。文化・風土なしにはいられないので、自動的に非固有のものを持つことになる。非固有とは作成者の文化や話者の文化を意味する。人工言語の使い手によって使われる文化がまちまちでは、文化の影響を受ける言語で表された意味もまちまちになり、誤解が耐えない。
固有の文化・風土を持つ言語を新生人工言語と称し、そうでない言語を旧人工言語と称する。新旧は優劣或いは良悪の問題ではないことに注意しなければならない。従来の人工言語に固有の文化・風土という概念が付与されなかったため、この命名を取っているに過ぎない。
新生人工言語は更に2つに分かれる。固有の文化・風土が自然か人工かによって分かれる。固有の人工文化・人工風土を持つものを人工新生人工言語(人工が連続してややこしいので完全新生人工言語や完全型とも)と称する。固有の自然文化・自然風土を持つものを自然新生人工言語(完全に対応して非完全新生人工言語や自然型や非完全型とも)と称する。
人工と自然の間はデジタルでなくアナログで、中間物が存在する。完全に地球の自然文化・風土の影響を受けずに先験的な人工文化・人工風土を作るのは事実上不可能である。完全新生人工言語は旧人工言語へのアンチテーゼとして置かれた観念上の所産である。この概念は難しいのでまとめを挙げる。
・旧人工言語も文化・風土は持つが、非固有のものであり、話者や作者ごとに異なる
・新生人工言語は固有の文化・風土を持つ
・固有の文化・風土が人工か自然かで新生人工言語は2つに分かれる
・完全新生人工言語は観念上の存在で、旧人工言語へのアンチテーゼとして置かれた
普及型は民族の壁を越えなければならないため、特定の文化・風土をデフォルトとして定義することはできない。その行為自体が言語の存在意義に矛盾する。したがって、普及型は旧人工言語であることが多い。従来の人工言語は普及型が最も多かった。この手の言語を旧人工言語と呼ぶのはそういったところに由来している。
新生人工言語に変えるのは言語の方針さえ違えば容易である。日本人が日本文化と日本風土を参照にしたとする。この場合、日本の文化と風土に固定しているので、自然新生人工言語である。たとえ言語そのものの構造が欧風でも和風でも構わない。新生人工言語の分類観点はあくまで文化・風土にあるからである。普及型は日本に文化・風土を固定することが方針上できないが、その他の型なら簡単にこうして新生人工言語を作ることができる。但し、それはあくまで自然新生人工言語であって、人工の域に向かうと作業量が増える。
*新生人工言語については新生人工言語 を参照のこと。
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