地名の付け方



地名だけでなく固有名詞は、数が多いことと命名の難しさから、人工言語の壁のひとつといえます
また、そもそも何が固有名詞であると線引きするかが難しい場合もあります
世界に1つのものが固有名詞であると定義すると、絶滅危惧種の最後の1匹も固有名詞になってしまいます

更に、1つのものが複数の固有名詞を持つこともあります
日本は対外的にはジャパンになります。また、川の名は場所によってまちまちな呼ばれ方をします
これらを1通りに決めるのは難しいです
日本海という呼び方ひとつ取っても韓国や中国から見て傲慢な呼び方ですしね

アルカの場合、異世界の設定なので、ゼロから一々命名しています。当然面倒くさいですが、詳細に決めています
逆にアルカでは地球の地名は適当につけています。なぜならアルカにとって異世界なので、私たちが困らない程度に付けています
たとえばインド南にあるからインド洋でいいか、など、わりと適当です
まぁ適当といっても地図帳と睨めっこで面倒くさい作業をしてもらいましたが

ここからは人工言語一般、異世界設定でない場合を考えてみましょう
まずどこからどこまでを1つの地名とするかで既に難問です
対外的には独立が認められた国なのに宗主国が認めていない場合、宗主国で買う地図にはその国は自分の領土として書かれているでしょう
北方領土もそうで、日本の社会の教科書とロシアでは違います。ここをまず日本にしていいべきかどうかが難問ですね
というように、同じ場所でも観点によってどこの場所か変わるので、政治的に公平な命名は難しいです

公平にするには政治的より地理的な命名のほうがいいでしょう。どこの国の領土かといったことを考慮せずに命名できますから
まず、地球を緯線と経線でマス目に区切り、各マスに体系的な名前を付けておく。地図帳の索引ページの「Aの1」を言語化したような地名です
但し、西洋のような密集地の線は細かく区切り、大洋は大雑把にするといった作業が必要です。でないと無駄な部分まで名前がついてしまいます
しかしながら、それを敢えて活用することもできます。地球を一定区域ごとに名付けられるので、海洋に出たときや小さな島の命名をする際に便利でしょう
したがって、これはどちらでもいいのですが、いずれにせよ線でブロックごとに地球を区切ります

区切りましたか?
では、そのブロックに入っている国を命名します。ブロックに予め体系的な名前を付けてあるので容易ですね
当然1ブロックに複数の国が入ることがあります。その場合、接辞を付けたり母音や子音を変えたりして区別します
逆に1国が数ブロックに入ることもあります。ロシアなどそうですね。その場合、その数ブロックの中で他の国が入らないところを選んで命名します

こういう区切りをすれば陸と海は命名できます
山川はその山川の面積を最も多く持つ国の名を元に命名します
或いは別の国に入った時点で名前を変えるのもいいかもしれません。面倒ですが
こうすれば政治色なく決められますし、時代の変化にも対応しやすいです

また、アルカでは地球のことは、わりとどうでも良かったので、私が生きている間持てばいいと考えました
現在の地図を元に、いくつか代表の国を選びます。そして周辺諸国を地理や歴史的結びつきでまとめ、
幹母音をすげ変えて命名します。国が分裂したり増えたりすれば、近くにある幹母音の余った国名を利用したりします
この方法だと地球上のあらゆる区域を表わすことはできませんが、数日で作れ、手っ取り早く実用化できます

ブロック法でもアルカ法でも小国やたくさんある小さい島に対応できますが、どうしても語形は長くなります。化学物質を名付けるようなものですから
そもそも1つの言語で体系的に地球の全ての地名を名付けようとすると莫大な合成語が必要です
国は数百だからまかなえても、小さい島や、県名、町名までは付けてられません。付けきる前に死にます
というか付ける速度より現地の変化のほうが地球規模で見れば早いです
ブロック法を使っても地球規模で見れば一々茨城県笠間市なんて小さいところを付けるほど細かくは区切れません
そこまで区切ると体系的な名を付けるための音素が不足し、それを補うために音素を組み合わせた結果、語形が恐ろしく伸びることでしょう

そこで、小さい場所についてはこれまでとは別の方法を採ります
地名の圧縮です
日本では富士見なんて地名、多分全国にたくさんあるでしょう。~台とか~丘なんていうのも
そこで次の手段です。そう、台ように、同じような地形は全て同じ名前にしてしまうんです
流石に台1つだと地球には該当箇所が無数にあるので、いくつか台を種別する必要がありますが、
こうすれば地形の種類による命名は数百~千程度の語の組み合わせで地球全部をまかなえます

個人が日常的に移動する範囲以内に~台がいくつもあってはいけませんが、個人の範囲外であれば問題ありません
すると、普段個人が使う場合は短い語形ですみます
手紙などで詳しく言う場合だけ県名などを付ければ区別できるので、便利な方法です

そもそも地名は地形や歴史に基づいたものが多いので、そんなに種類がありません
外国語にすると全く違って聞こえる名前も、日本語に訳せばありきたりということも多いです
この方法ならそういう地名を一緒くたに扱えるので、非常に楽です
たとえば直訳して「緑の山」となるような地名など世界に腐るほどあるでしょうが、どれも現地語で言うのでこちらには分かりません
しかしこの方法なら簡単に作れるし、初めて聞いてもどんなところか、或いは昔どんなところだったか分かります
たとえばいきなり韓国のテグについて「緑山」といわれたとき、そこを知らなくても地形などが想像付きます

問題はこの方法は歴史に対応しないことです。地形は歴史によって変わります
緑豊かな場所が砂漠になることもあります
その際、歴史に合わせて名前を変えるか、歴史を残すかは自由です

もし、グリーンランドのように歴史的な策略によってできた地名についてはどうでしょう
直訳すると緑の島ですが、全く逆です。逆にアイスランドといったほうがいいわけです
この場合なのですが、グリーンランドという名称を参考にせずに、
あくまであの寒々とした地形を元に、 当該人工言語で命名すればいいでしょう
必ずしも既成の名称は参考にしなくてもいいと思います
日本だって、別に日が昇る国ではないですし、中国も世界の中にないですし
直訳が不適当だったり、何と訳せばいいか分からない場合、地理的に決めればいいでしょう
その後地形が変わった場合、命名を変えるか残すかは自由です

尚、ここで紹介したのは一端ですので、
ブロック法やアルカのやりかた以上に合理的な命名法があるでしょう

楽と言ってきましたが、あくまで人工文化にしては、の話です
地球全部を作るとなると、この方法でも途方もないくらい大変です
実際問題、世界各国を名付け、都市や大陸、大きな山川海等を名付けたら、
後は自分に関わりの無い地名は付けずに、必要があれば付けられるシステムにして保留しておいた方が無難です

翻って、一番楽なのは自然言語を参考にすることです。英語をそのまま取るのが一番楽でしょうが、
自言語が英語の音韻体系とあまりに合わない場合は、別の言語を選んだほうがいいかもしれません

また、現地の言葉を取るという方法もありますが、紛争地では複数の名を選ばなければならないし、滅んでしまった歴史上の国の地名は何といえばいいのか分かりません
更に、英語1つ取っても音韻体系の食い違いで表わせないかもしれないと心配しているのに、現地の語を取ってしまったらますます心配が増えます
たとえば自言語に声調が無い場合、中国の地名は同音異義語ばかりが増えて困ります。漢字さえ失って区別が付かなくなりますし
そういう理由で現地語を取るのも問題があります

現状で一番楽なのは、英語と自言語の音韻対応表を作り、英語に合わせて現地語を作る方法でしょう
英語は文献量が世界一なので調べやすいです。但し、英語はスペルから音が正確に分からないので、書いたとおりに読む言語を選んだ方がいいかもしれません
というか貴方が日本人なら、日本にもかなりの文献があるので、日本語の名前をそのまま付けてはどうでしょう
日本語は音素数が少なく、音節構造も単純なので、英語より自言語で表わせる確率は高いはずです
尚、こうやってできた地名は人工風土に基づくものではありません

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