文法
文法は言語のシステムの中で最も組み立て感が得られるためか、大抵の人工言語で決められています
作成者の多くは文法システムを作るのが好きなようで、未完成の言語でも文法はそれなりにできていたりします
まず始めに決めるのは語順だと思いますが、メジャーな語順を選んでおけば無難でしょう
一番世に多いのはSOVで、次に多いのはSVOなので、このどちらかを選んでおけば無難でしょう
文法に関してはどの人工言語も細かく決めていますので、実際人工言語のHPに行って見比べるのが一番です
ここでは普通のHPで述べないようなことを述べるため、他で分かることは他で調べたほうが良いでしょう
ただ、いくつか諸注意はあります
まず、類型論的に見て、屈折語や抱合語は避けたほうがいいでしょう
文中の単語が辞書形でないことが多く、活用語が一々辞書に収録されないからです
Je t'aimeではaimerを引かねばなりません。t'やaimeを探してもまず載っていません
活用と曲用はなるべく避けたほうがいいでしょう
名詞の性は無くしたほうが効率的です。形容詞と名詞の一致も避けたほうが学習が容易でしょう
エスペラントは形容詞と名詞が一致しますが、国際語イドではその点が排他されています
煩雑さは一般的にいって消したほうがいいです
また、スペーシングもあったほうがいいです
日本語のようにスペーシングがないと、どこまでが1単語か分かりにくいです
中国語で4文字くらい並ぶと、何文字で何パーツに区切って引けばいいのか分からないときがあって困った経験があります
スペーシングがあれば語の区切りが分かりやすいので、その分辞書が引きやすくなります
いずれ機械処理をする際も作業が楽になるでしょう
数ですが、これを文法カテゴリーにするかどうかには長短があります。ですが、短所のほうが多いのではないでしょうか
英語話者も単複どちらか分からない表現がありますし、論理的に言っておかしな表現や非合理的な表現があるからです
たとえば、sheepのような単複同形や、man,menのような変化は非体系的で覚えづらいです
また、furnitureやadviceは数えられるのに不可算名詞だったり、everyは全てなのに単数を取るなどといった現象もあります
一応これらにも理屈があってできています
ですが、ネイティブでさえ悩むことがあるのだから、数のカテゴリーのない言語の話者はまして混乱します
その点で数はカテゴリーから外しても良いと思います
ただ、数のカテゴリーを持つ長所もあります。たとえばこのような場合――
古池や蛙飛び込む水の音
ラフカディオハーンらがこれを英訳したとき、この蛙が1匹か複数か気になったそうです
因みにこの句の場合、単数で訳されるほうが一般的ですが、彼は複数にしました
Old pond -- frogs jumped in -- sound of water.
私はこれを知ったとき、今までこの蛙がそもそも何匹かなど考えたこともない日本語母語話者としての自分に気付きました
数がカテゴリー化されている言語では、数の分だけ情報量が高くなります。日本人が気付かない疑問に気付くことがあります
また、英語ではfireかfiresかで、それが数えられない単なる火なのか、数えられる火事としての火なのかが区別できます
火と火事という別の語を作ったり覚えたりする必要がなく、fireかfires(a fire)かで区別できるのは便利です
こういった長所が残されているため、必ずしも数のカテゴリーを外すことを奨励しません
――しませんが、かといって文法カテゴリーにするほどでもないだろうという考えです
普段は文脈に依存させ、明示が必要なときに付ければ良いと思います
テンス(時制)は現在・過去・未来を基本として備えるべきです。人間は現在を中心に未来と過去を見ているから、この分類は自然です
他に作るとしたら通時のように一般的な真理を述べるものや、不定時制のように時制が不定で曖昧というのが考えられます
どちらも面白いですが、あればいいというほどではありません
時制のない言語というのもあります。yesterdayのような時間を表す副詞を時制の代わりとする言語です。合理的です
アスペクト(相)は完了と未完了の対立が一番大事です。大抵の自然言語でもそうなっています。ロシア語に顕著なカテゴリーです
ですが、完了と開始と経過などをそれぞれ等位に置くのも良いでしょう
要は完了とそれ以外を差異化できることが重要です。他に作るとしたら将然相などがありますが、これはあってもなくてもいいです
行為の反復などはアスペクトでなく、副詞で表わすほうが合理的かもしれません
アスペクトは副詞で表わしても構いません。テンスも実はそうです
いずれにせよ、テンスもアスペクトも動詞と関連付けるのが一般的です
また、品詞の種類ですが、少なければいいというわけでもなく、多ければいいというわけでもありません
多いと制御しづらく、学習しづらいです
少ないと、少ないものを組み合わせるので必然的に文が長くなり、煩雑になります
バランスが肝要です
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