語彙の流用
後験語の場合、語彙は流用が基本です。
流用する場合、流用先の言語の音韻体系とある程度に似た音韻体系を持っていないと厳しいです。
たとえば音韻数が多く音節構造も複雑な英語が流用元で、流用先が中国語のような単純な音節構造の声調人工言語だったらどうでしょう。
殆どの単語はすんなり流用できないはずです。
これは中国語における英語の外来語がいかに原音とかけ離れているかを見れば実感できます。
serixは英語を流用しているので、音韻体系も英語に似せました。
一番始めに定めたように、音韻体系をある程度決めておかないと、流用したときにどの文字に転写するのか迷います。
作者が迷うということは、学習者はもっと迷います。
特に英語はスペルと発音が一致しないので、転写には十分注意が必要です。
また、流用するといってもそのまま取り入れるよりは少しアレンジしたほうがいいです。
一般に機能語は短いほうがいいので、たとえば最上級接続詞はmoustでなくmostにしています。
短いほうがいいのはよく使う単語も同じです。基本語はCVCか、それに何か加えたくらいでいいと思います。
数もよく使うので短いほうがいいでしょう。criなどは母音を短くしました。
あと、数のように使う文脈が同じものは語形を似せないことが大切です。
1も3も数字なので、使う文脈は同じですよね。1がtaで3がdaだと聞き間違いが起こります。
まぁ、アルカは3がviで4がvaなんですけどね……。
流用した語の語形がどれだけオリジナルとかけ離れるかは重要です。
あまり似せるとオリジナリティがなさすぎだし、元が分からないほど変えてしまうと後験語の意味がありません。
バランスが大事です。
また、どの程度まで語彙を流用するか。これも大きな問題です。
基本語だけ流用するのか。逆に基本語はオリジナルで、高級語だけ流用するのか。
或いは語の流用に規則性を持たせ、全ての語を機械的に流用するのか。
全て一長一短ですので、自言語の目的に沿わせて選択していきましょう。
serixは機能語などの超基本語は単なる流用に留めず、流用したあと語を短縮しています。
基本語はbreik,laikなどを見れば分かるように、そのままの形を留めています。
音節構造についてですが、serixは英語が可能な子音連続はそのまま可能としています。
自言語の可能な音節数を計算する場合、後験語は語の流用を考え、流用元と合わせたほうが無難です。
一方、先験語は語を借りないので、自分の好きなような可能な音節の組み合わせをしましょう。
基本的に音節というものは母音を中核とします。その周りに子音があります。
原子核の周りを電子が周っているイメージです。
たとえばCVCやCCVCCなどの音節が考えられるわけですが、このCには何が入ってもいいというわけではありません。
一般にソノリティ(音の聞こえ)の高いものが中心に来ます。CCVCCを山の形にイメージしてください。
母音のソノリティが一番高く、山のてっぺんです。裾野、つまり外側の子音に行くほどソノリティが低くなる。
これが音節のソノリティによる仕組みです。
ソノリティは一般に閉鎖音が最も弱く、側面音や鼻音は強く、母音が最も強いです。
しかも母音の中でもアが一番強いとされています。
大きく叫べというと「アー!」っというのはソノリティから見れば理に適ってます。
側面音や鼻音は子音の中ではソノリティが高いので母音に近い性質を持ちます。
音節はふつう母音が作りますが、littleのように側面音や鼻音が音節を作ることがあるのはそのせいです。
[plei]という発音があるのは、ソノリティがp<lだからです。[lpei]なんてないですよね。
ただ、言語には例外が付き物です。
英語にはspainやspiritなどの単語が存在しますが、実はソノリティをみるとs>pです。
こういう変な子音連続は偶にあります。アルカでも古アルカ由来でルフェルという固有名詞は/lfer/です。
側面音のほうが摩擦音よりソノリティが高いので、ふつうはありえません。
じゃあこのソノリティの法則って使えないのかっていうとそうでもありません。
エスプリって言葉、哲学とかで聞きますよね。あれはフランス語のespritから来ています。
また、spainはスペインではespana(字上符省略)です。
なぜe-が付いているのでしょう。あれはspという子音連続を避けた結果です。
eを付けることによってspではなく、esとpに分けたのです。
ソノリティが山形の音節を描くのが一般的という感覚が活かされています。
因みにこの感覚はラテン人にはなかったのか、ラテン語ではこの語にsp-を使います。eが付きません。
また、調音するのが難しいという理由で却下される子音連続もあります。
dkmatbrとか発音できますか?CCCVCCCなんですが。私はムリです……。多分多くの人類もムリでしょう。
先験語の場合、上記の点に注意して子音連続や音節構造を考えていってください。
その上で自分のオリジナルの語を当てはめていきます。
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