音韻・音声・アクセント



「あれ、なんでserishじゃなくてserixなんだろう。これじゃあセリックスじゃないか」
良いところに気付かれましたね。では、音韻について進みましょう。

音韻を表すには文字が必要ですが、serixはアルファベットを使います。
後験語の場合、アルファベットを使うのが一番便利だと思います。
後述しますが、キーボードで打ちやすく、知名度も高いからです。

ところで、ご存知のとおり、英語はスペルと読みが一致しない単語が多いです。
たとえば母音字。同じaの文字でもcatとwatchでは音が異なります。
組み合わせてea,eeなどとすると「エア」や「エー」ではなく「イー」になったりします。

子音のほうがスペルと音が一致します。caceの"c"のようにカ行になったりサ行になったりするものはありますが。
あと、複合子音もあります。shではシャ行になりますし、chはチャ行になります。
ghのようにもはや読まない字もあります。

子音より母音の方が一致しないのは歴史の悪戯が原因です。
印刷技術の躍進に伴って、それまでバラバラだった単語の綴り方が統一されていった。
――と思いきや、大母音推移という現象が起こってしまった。
それで英語は母音の綴りと読みが一致しない率が子音より高いのです。

こういう皮肉な歴史まで真似る必要はないので、serixの音韻は簡単なものに定めましょう。
その前に。今後、人工言語はネットに頼って公開されると考えられます。エスペラントでさえそれは同じです。
ネットでということはパソコンを使うわけで、人工言語の入力には一番普及しているqwertyキーボードを使います。

qwertyで入力しやすい言語作りというのはネットで公開する上では重要な要素だと思います。
unicodeが樹立された今でもANSIは広く使われていますし、IMEもデフォルトは日本語のIME standardでしょう。
フランス語やエスペラントの字上符(アクサンテギュとか)を表示する方法が分からなかったり、文字コードをコピる人もいるでしょう。
入力のしやすさを考え、serixは通常のIME設定、通常のqwertyで簡単に表示できるようにします。

先験語も後験語は打ちやすさは考慮したほうがいいです。辞書作りで泣きたくなければ。
後験語は特に学習者の便宜を図るので、できるだけqwerty内で抑えると良いと思います。絶対条件ではありませんけど。

さて、qwerty前提で音韻体系を決めます。
パソコンの周辺機器に音韻が左右される世の中になるとは、ザメンホフもラティフォギットも驚きでしょうね。
まず母音。英語の母音の数は学者によって変わります。でも大体は16~18程度に分類されています。
研究社の『新英和中辞典』など、辞書の母音数もこの範囲に収まっています。

母音数18というのは自然言語にしても多いほうです。
*因みに、世界で最も典型的なのは5母音体系。エスペラントやアルカもこれに従う。

しかも複合母音(アイとかエイとか)まで入れるとかなりの数になります。
これを忠実に写したらキーがいくつあっても足りませんので、適度にまとめましょう。

発音はイギリス式を参考にします。元々英語はここの言葉なので。
母音は主にa,i,u,e,oを使います。

a:ask,fatherなどの「大きな口の長いア」
i:eastの「横に口を開くイ」、happyの「弱いイ」、inkの「強いが、あまり口を横にさせないイ」
u:goodの「強いが唇の丸めが少ないウ」、actualの「曖昧母音に近いウ」、poolの「唇を丸めたウ」
e:epidemic。最初のエは「弱めのエ。あまり口を開かない」。終わりのエは「強いエ。口を開く」
o:topの「短いオ」。allの「長いオ」
↑これらの音声(発音)は日本語のアイウエオを明瞭に発音したもので構いません。

曖昧母音(シュワー)は音韻を当てずに、音声現象として処理します。
一番近い母音を適宜当てます。

/i:/などは英語では長母音とみなされず、1音韻とみなされますが、キー節約のため、長母音になってもらいます。
たとえばkeyはkii、foodはfuud。

複合母音は2重母音と定義し、音韻と見なしません。音韻節約です。
上の基本母音を組み合わせ、アイはai、オウはouなどとします。

r化母音。英音ではr化せずに、単にシュワーで終わります。hair,fireなどがそうです。
このr化しなかったシュワーはaで表します。よってhairはhea、fireはfaia。

/j/が入る口蓋化したものは母音のiとの組み合わせと捉え、音韻から追い出します。
要するにヤ行はyaでなく、iaとします。キャットを昔キヤツトと書いた日本人の感覚に近いものがあります。

また、wは「唇音化したウ」と捉え、音韻から外します。ワはwaでなくuaです。
なぜヤ行とワ行を消したのかというと、理由はキーボにあります。

母音、実は2つ残っています。
catに使われる「エとアの真ん中の音」と、comeに使われる「オみたいなア。日本語のアに近い」です。

アルファベット26字で表し、字上符ナシ、大文字ナシが一番使いやすいです。
26音韻以内なら小文字だけで表せますし、シフトキーも押さなくて済みます。便利じゃありませんか。
もしcomeのアを大文字のOとかにしたら、comeは「kOm」になります。
大文字が間に入って、レタリング的に見苦しいですよね……。

catのアは舌が前寄りなのでyをあて、comeのアは舌が後ろ寄りなのでwを当てるとします。
yを見るとイを思い出す語学好きの方、すみません。でも語学好きならこれにもきっとすぐ慣れるでしょう(^-^;

さて、そうすればcomeはkwmになります。パッと見、何て読むのか分かりませんが、慣れの問題です。
一度慣れてしまえばあとは美観の問題です。そうなるとkOmよりずっと見やすいでしょう。
そういう理由で半子音w,yは消えてもらいました。

さて、おおむね母音はこんな感じでしょうか。
結論として、母音はa,i,u,e,o,y,wの7種。
シュワーは音声現象とする。複合母音は2重母音にする。長音は母音を重ねる。r化音はシュワー止め。

次に子音です。
子音のほうが話は早い。ローマ字読みで行きましょう。

ジャ行はjで良いとして、シャ行はどうしましょう。
英語の子音をキーボにあてはめていくと、残るのはc,q,xの3文字です。

ポルトガル語でシャ行がxなので、ちょっとこれはよそから借りてきましょう。
したがってシュの音はxになります。だからserixと書いてセリッシュと読みます。

チャ行とヂャ行はどうしましょう。これらは破擦音ですが、音韻節約したいのでふつうに複合子音とみなします。
チュという複合子音はタ行のtとシャ行のxの組み合わせなのでtx。checkはtxek。
ヂュという複合子音はダ行のdとジャ行のjの組み合わせなのでdj。joyはdjoi。
尚、ツァ行はtsで、ヅァ行はdzで表します。

残るは某新聞のCMでおなじみのth音です。θみたいな発音記号の子音です。
これは清濁2音あります。残ったキーはc,qです。
thank youのthはcとし、thisのthはqとします。したがってthisはqis。

l音ですが、語末で「ぅ」になるダークLは音韻として立てません。

longなどのng音ですが、ngと書きます。
英語と違って音を飲み込まず、そのまま「ング」と読みます。

これで子音は終わりです。
結論として、serixの子音はp,b,t,d,k,g,f,v,c,q,s,z,x,j,h,m,n,l,rの19音になりました。
母音が7だったので、累計26音になりました。これでスッキリqwertyが使えます。

因みに、大文字を個別の音韻表記に使えばqwertyは2倍にキーが増えるようなものです。
大文字を本格的に利用すれば、2倍の音素数まで表現できます。serixは26以内に収めましたが。
文頭大文字とか固有名詞大文字とか、そんなことに使うより、大文字は音韻表記に使ったほうが合理的だと思います。
尚、serixに大文字はありません。一重に面倒だからです。

☆注意すべき音韻(要するにこの5個だけ覚えれば、あとはローマ字読みでOK)
x=シャ行
c=thinkのth
q=thisのth
w=comeのア
y=catのア

・アクセント

英語と同じく強弱アクセントです。
エスペラントと違って自由アクセントで、アクセントの位置は英語と同じになります。
アクセントは字上符などで表示しません。書くのと覚えるのが面倒だからです。

たとえばpocketはpokitになりますが、これはpoにアクセントがあります。
また、rememberはrimembaですが、これはmemの音節にアクセントがあります。

エスペラントと違った趣向にしたかったこともあって、アクセントは自由にしました。
あと、制アルカが拘束で、自由アクセントは古アルカぶりなので。


どうでしょう。文字と音を決めるだけで随分言語の形ができてきましたよね。
アルファベットは表音文字なので、音韻論で綴字法まで一緒に決めました。
これによって英語オリジナルと一味違う雰囲気になりました。
leash(犬の鎖)はliixになるので、ちょっと違う感じです。

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