・網羅的なコロケーション

コロケーションは言語によって異なる。
コロケーションを網羅しないと、異言語話者は誤用を正せない。
人工言語のように母語話者がいない言語では致命的で、誤解が絶えないことになる。

→ではどうすればコロケーションの記述を網羅できるか。

二言語辞典の場合、対象言語と異なるコロケーションだけ記述すれば網羅できる。英和の場合、日英で重複している部分をカットすればよい。
一言語辞典の場合、すべて記述しないと網羅できない。

→網羅するには具体的にどうすればよい?

ソースドメインをすべて記述する。
同ドメイン内でメトニミーなどがある場合、比喩の入れ子構造が生じる。この入れ子も記述する。
欠点は記述が膨大なことで、その作業を行うのは現実的ではない。

●ソースドメインとは?

「時間を稼ぐ」の場合、時間を金でメタファーしている。
認知意味論ではこの場合、金を起点領域(ソースドメイン)、時間を標的領域(ターゲットドメイン)という。
金や時間のことを概念領域という。

言語を対照すると、ドメイン同士に「同一」「並列」「包摂」の種別があることが分かる。これはセレンの用語。

同一:時間を潰すとkill time
並列:時間を稼ぐとbuy time
包摂:夢を見るとhave a dream

●カテゴリーとシネクドキー

「傘を閉じる」とclose an umbrellaを図にすると上記と同じようになる。
しかし「傘」と「開閉物」はメタファーではなくシネクドキーである。
従って「傘」と「開閉物」はカテゴリーである。

しかし図で見れば分かるとおり、メタファーのときと構造が同じなので、コロケーションの分析では両者を同一視したほうが合理的である。

●比喩の入れ子構造

「傘を差す」とopen an umbrellaを比較する。
傘を差せば次はそれを開くのだから、「差す」で「開く」を示しているといえる。
これは時間的メトニミーである。

従って、実は「傘を差す」とopen an umbrellaは同一のソースドメインを持つといえる。
ただし、「傘を差す」の場合、「差す」自体がメトニミーになっている。
シネクドキーの中にメトニミーがあるので、比喩が入れ子構造になっている。

●ソースドメインや上位のカテゴリとコロケーション

ソースドメインや上位のカテゴリを辞書に記述しておけば、それらに使えるコロケーションはターゲットドメインや下位のカテゴリも使えることになる。
例えばソースの金は稼ぐものなので、ターゲットの時間も稼ぐといえる。

しかし例外もある。
時間は「流れ」というソースを持っている。
「ゆったりした流れ」といえるので、「ゆったりとした時間をお過ごしください」といえる。
しかし「急な流れ」といえるが「急な時間」はややおかしい。
この場合、辞書の記述には<流れ -急な>など、追加を行うべきである。

●誤ったソース

時間のソースを「流れ」でなく「川」にするのは誤りである。
川は「深い」などといえるが、時間はいえない。
できるだけマイナスで示す例外が少なくなるようソースを決めるべきである。

●まとめ

上記の要領でいけば認知に基づき、外国人にでも漏れなく伝わるよう、網羅的なコロケーションが作れるのではないか。
しかし労力が大きく、dkといえども実効性に乏しい。どうすべきか迷うところである。


時間
<工程><金><流れ -?急な>

金があるので「費やす」などもいえるのだろうと推測できる。記述が短くて済む。
実際に突き詰めて考えると、修正であるマイナス値が多くありすぎて収集がつかなくなる恐れがある。
が、それは自然言語の話で、人工言語なら修正値が少ないように組めばいい話では?

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