億兆京など、位取りはどのように作ればいいだろうか。
そんなもの作らないというのもひとつの手である。
また、常に10の何乗という表現するのも手である。

では、位取りを作るとしたら、どのような手順が必要か。
なお、ここでは10進数を用いて説明している。
12進数などで作成することも同様の手順で可能。

1:桁の区切りを決める

英語は3桁ごとにミリオン、ビリオンと続く。
日本語は4桁ごとに億、兆と続く。
そこでまず、何桁ごとに区切るかを決める。

アルカの場合、万までが基本的な数え方なので、4桁で区切る。
従って以降も4桁ごとに区切っている。

なお、区切りは常に一定でなくてもよい。
中国語の場合、大数は億、兆と4桁区切りだが、極を超えた段階で8桁区切りになる数え方がある。
逆に小数は割、分、厘、毛のように、1桁ごとに細やかに区切られていく。
このように、桁によって区切りを可変にしてもよい。

2:何乗まで作るか

数は無限にあるので、何乗まで作るかを決めねばならない。
現実的にはそもそも京を超えたあたりで使わなくなるので16乗で十分である。

中国語の無量大数は68乗ないし88乗だが、別に張り合う必要はない。
中国語にはそれこそ不可説不可説転という、およそ10の37澗乗という位があるので、張り合うだけ無駄である。

アルカの場合、4が聖数なので、40乗で止めた。中国語でいう正である。
どの乗数で止めるかは、各言語の性質や制作方針や文化設定などに基づいて決める。
が、目安として、少なくとも京は欲しい。

小さい単位に関しては生活レベルではミリまでしか使わない。
科学でナノやピコが出る程度である。これも目安にしてほしい。

なお、アルカでは同じく小数もマイナス40乗までとした。

3:命数法を決める

位をどう名付けるかを最後に決める。
中国語の場合、恒河砂は「ガンジス川の砂の数のように多い」という意味である。

英語の場合、million, billion, trillionのように、英語が本来持っていない外来語の接頭辞を付けて表す。
要するに、「1リオン」「2リオン」「3リオン」と言っているにほかならない。
数の中に外来語の数を埋め込むというのも一種の命数法である。

ざっと対照しても、中国語のように文化的な付け方、英語のように数学的な付け方などが見られる。
アルカの場合、前者を選んだ。詳細を幻日辞典から転載する。

子供が覚えやすいよう、身近な動物名を命数法に用いた。大人っぽくしたければもっと雅なものも作れたと思う。
砂だ陽炎だと発想が転々とすると覚えにくいので、序列を付けた上で動物に限定することで記憶を助けている。
セレンは大数を9歳で知ったので、子供がそれくらいで大数に触れるとすると、動物がよいだろうと考えた。

0から9まではu, ko, ta, vi, val, lin, kis, nol, ten, los。10はyurで11はyurko。日本語と同じ数え方。
位はyur(十), gal(百), kot(千), sen(万)までが基本の単位。
億からは4桁区切りで単位を作る。アルカで大きいと考えられている動物の名前で単位は表現される。実際にはサメの方がクジラより大きい種があるが、アルバザード人の感覚だとサメのほうが一般に小さいなど、文化的な見方が含まれているので注意。
どの動物もアルバザードに生息するもので、大きかろうがキリンやコンドルなどは除外される。象はアルバザード領内に生息はしていないが、輸入されてからは知名度が高く一般的。
vaiks(山猫=億), avom(狼=兆), delt(熊=京), fenz(豹=垓), viet(獅子=ジョ), kano(鷲=穣), hird(鮫=溝), bex(鯨=澗), kaim(象=正)
あからじめ揚げ足を取っておくと、一億匹の山猫はvaiks vaiksとなり、混乱を招く。だが、そんな文は実際にはありえないのでナンセンス。
なお、正で10の40乗になり、聖数の4が出てきているため、ここでストップする。これ以上の数は10の何乗と表現する。
一方、マイナス乗についても同様である。
ton(デシ), lar(センチ), nit(ミリ), fat(糸)までが基本の単位。
それ以下はアルバザードで小さいと考えられている一般的な動物を使う。語形がほかの数字に似ているものは省かれる。例えばkoko(鳩)はko(1)と似ているのでアウト。
oma(犬=沙), ket(猫=漠), fem(鶏=瞬息), vekm(鴉=虚空), erit(蝙蝠=涅槃寂静), kamt(鼠=マイナス28乗), zolk(栗鼠=マイナス32乗), txit(雀=マイナス36乗), esta(蛍=マイナス40乗)
2 omaは「二匹の犬」なのか「2沙」なのか分からないように見える。だが後者の場合イントネーションが異なる。また、2沙は物理や技術の特殊なシーンで使う用法なので、文脈が完全に異なる。従って混同はない。