一方、11相をフルに使うとどれだけのことが表現できるか見てみよう。

・skin(座る:正確には座らせる)の場合

skin:座る
skin sat:座ろうとして腰を曲げようとする
skin kit:腰を曲げ始める
skinar:腰を落としているところ
skinik:座面に接触

skinof:座っている状態を維持(行為動詞の影響相かつ状態動詞の無相)

skinof sat:座ろうと思った段階から腰を下ろすところまで
skinof kit:座面に接触
skines:座っている状態のうち、接触した瞬間と立ち上がる瞬間を除いた正味の部分
skinofik:座り終えて立ち上がる瞬間
skinofes:座面から離れ、座面が暖かい状態

以上。

ところで、skinikとskinof kitは同じに見えるが、ニュアンスが違う。
前者は行為の終わりなので、ようやく腰がついて「あー、どっこいしょ」という感じである。
後者はこれから休息の始まりなので、「ふぃー、つかれた、よいよい」という感じである。
同じ瞬間を指していても、行為の終わりなのか状態の始まりなのか、どちらに目をつけているかでニュアンスが異なる。

・in(見る)

in:見る。目を動かして対象が目に入るまでの一連の動作
in sat:見ようとして首を動かそうとする
in kit:見ようとして首を動かしはじめた
inar:見ようとしてクレーンみたいに首を動かしている最中
inik:目に入った。「あ、発見!」というニュアンス

inof:見ている状態。相手が見えている

inof sat:見ようと思った段階から、目に入れる前まで
inof kit:目に入った。「さぁ、これから見つめてやろうじゃないかゲヘヘヘ」というニュアンス
ines:見ている状態のうち、開始と完了が欠けている正味の部分
inofik:見終わって目を離すとき
inofes:見終わって、見た影響が残存している段階

・mok(眠る)

mok:寝始めから入眠までの一連の動作
mok sat:寝ようとベッドメイキング
mok kit:さぁ寝ようと目をつぶる
mokar:羊を数えてる段階
mokik:入眠

mokof:寝ている状態。グースカ中

mokof sat:ベッドメイキングから羊を数えるまで
mokof kit:「さぁここが睡眠時間のカウントの起点です」という感じ
mokes:正味の睡眠時間
mokofik:目が覚めた
mokofes:目が覚めて、「あぁ、寝ぼけてるなぁ」とか「寝跡がついてるなぁ」という段階

また、中には意味的に11相実際には考えづらい動詞もある。
いちいち覚える必要はない。

・vort(死ぬ)

vort:苦しみだして死ぬまで
vort sat:死の予感
vort kit:容態が急変しました
vortar:心拍数が下がっています
vortik:ご臨終です

vortof:亡くなっています

vortof sat:死の予感から臨終前まで
vortof kit:死後の世界の始まりです
vortes:死後の世界が始まってから復活するまでの死の状態を継続した期間(非現実的)
vortofik:死から復活してゾンビになったり蘇ったり転生した瞬間(非現実的)
vortofes:復活したり転生した後の状態(非現実的)

アスペクト考のまとめ