・7相と3段階

7相は「事前段階」「実行段階」「事後段階」に分けられる。
それらはそれぞれ――○――○――の5相からなる。
従って15相ある計算だが、重複部分を消せるので、7相になる。(すなわちKakis氏の体系)
図1のように。

・実行段階と接辞

実行段階が一番人間の興味を引き、頻度も高い相だ。
図2を見るときちんと実行段階の中だけが接辞になっているのが分かる。
なお、実行段階の範囲を決定する前に、すでに接辞が決まっていたことを追記したい。

・行為動詞と状態動詞

7相を3段階でなく2種の動詞で分けることもできる。
図3である。行為動詞は例えば「座る」。状態動詞は例えば「座っている」である。

行為動詞の特徴は動的かつ意図的であること。動作主の意思が関与しがちである。(この点はnias氏の助言で気付いた)
「燃やす」が行為動詞で「燃える、燃えている」が状態動詞になるのは、前者のほうが動作主の意思によって行われる度合いが大きいためである。
状態動詞は逆に静的で自発的なものである。

hatiaの行為動詞としての意味が「好きになる」なのは、「好きである」に比べて動的だからである。
意思が関与するのは状態動詞「好きである」もそうだが、行為の動的レベルは前者のほうが高い。

・累積動詞

今回のアスペクトは純粋に現象の局面しか見ていない。
反復相や継続相といった現象の進行段階以外を表す相は捨象している。

また、今回の考察は主に接尾辞をつけることで動詞の様態の意味の変化を示しているため、アクツィオンスアルトについての考察といってよい。
アクツィオンスアルトのうち、時間的経過の段階のみを扱い、様態の強度や程度には触れなかった。
ここで後者に触れる。

様態の強度や程度とは「一回(単位)、多回(累積)、縮小、相互」などがある。
考えればいいのは最初の2つだ。縮小というのは「おねんねする」のような子供への言葉を示す類で、アスペクトの本質とはいえない。

単位と累積の違いはロシア語の定動詞と不定動詞の対立に見られ、ロシア語では「歩く」「走る」など、語彙レベルで定不定が分かれている。
不定動詞は往復や反復を表す。また、ゴール(移動)を伴わない運動能力も指す。
例えば「子供は1歳になれば歩くよ」というときの歩くは不定動詞だ。
一方、日本語の「歩く」は定不定が別れていない。

不定動詞はゴールがないため、完了相を考えづらい。
実際ロシア語だと定も不定も不完了なのだが、接辞をつけると定は完了になるのに、不定は不完了のままだ。
不定動詞は不完了らしい不完了なのだろう。完了と完了相は別物だが、このことの影響力はゼロではなかろう。

しいて不定動詞に完了相を求めるなら、完了相は脚を止めたときだろうか。
定動詞の場合、「駅まで歩いた」のように、完了相はゴールとイコールなので分かりやすい。

今回は、不定動詞はその動作を止めたときを完了相とし、定動詞と同じように扱った。
「歩く」などだけでなく、「食べる」なども定不定の違いが求められる。
「夕飯を食べる」は定だが、「人は一日三回食べる」は不定だ。
だが現実にはあらゆる行為が終わりを持つので、不定も定として考える。
「人は一日三回食べる」の場合は定動詞&行為動詞「食べる」の無相とした。
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