・不定動詞にギブアップした件

不定動詞(累積動詞)を制のとき分析したが、新生ではこれを弾きたかった。
7相体系だけで扱えればシンプルだからだ。だが諦めた。
不定動詞はどうごまかしても7相と違う仕組みだ。

その過程↓

まず、不定動詞「歩く」について考える。
「殺す」は定動詞の用法しかないが、「歩く」という動詞は移動動詞としての定動詞と、運動動詞としての不定動詞がある。
日本語では語彙的にどちらも同じ単語だ。英語もアルカも。ロシア語では違う。

移動動詞は7相に収まる。だが後者は収まらない。
不定動詞としての「歩く」は一歩歩くという最小単位の動作を繰り返して累積した動詞だ。
一歩歩くというのを○で表すと、累積動詞歩くは○○○○とエンドレスに続く。
さっき魚楠さんがブログで述べ、自分自身が昔のブログで述べていたような、例の累積動詞というやつだ。

で、この○○○○は未来永劫という意味ではないので、始まりも終わりも言おうと思えば言える。
つまり「歩き始めた」とか「歩き終えた」というやつだ。
その時点を|で表すと、|○○○○|で不定動詞は表せる。

さて、○○○○は数珠繋ぎになっているので、これをひとつの線とみなすとどうなるか。
|――|だ。で、|というのは歩き出した時点や歩き終えた時点なので、点である。
今までの7相体系の図でいうと、|でなく○で示したほうがよい。
というわけで○――○になる。

おぉ、7相体系に似てるではないか。
これを7相体系のようにkit - ar -ikで当てはめればOK?
なんて考えていた。

ところがだ。 この図を――○――○――にできるだろうか?
――っていうのは数珠繋ぎになった○○○○の代理だ。
――○――○――の最初の丸は「歩き出した時点」を指す。
ということは最初の丸の左側ではまだ歩いていないわけだ。
にもかかわらず一番左の――は○○○○の代理だから、「歩いている」ことを意味する。

ここでギブアップした。累積動詞は――○――○――になれない。
7相体系にあてはめるのは無理。
あくまで最初の○○○○の左右に開始と完了をくっつけたモデルを考えたほうが自然だ。

この開始と完了は相ではない。
だから不定動詞としてのlukの開始はluk kitといえない。完了はlukikと言えない。
定動詞として「どこかに移動するために歩きだした」はluk kitといい、「どこかに到着して歩き終わった」はlukikといえる。
だが、不定動詞として「歩き始めた」はluk kitとはいえず、「歩き終えた」はlukikといえないということだ。

なぜなら不定動詞は7相体系とはまるで違うからだ。
定動詞lukは――○――○――○――だ。
不定動詞lukは○○○○だ。せいぜいその左右に開始と完了の壁がついたモデルだ。
両者じゃまるで異なる。

ここでセレンはアルカに不定動詞の存在を認めた。はぁ……。
では、定と不定を分けるかどうかが問題だ。
例えば定はlukで、不定はselukにするなど。スラブ語っぽいね。
あるいは日英のようにlukにするか。

これは好みの問題だが、俺は後者。俺はというか、古アルカからの伝統を考慮すれば後者でしょうね。
俺の好みをモロに出すとするなら、紫苑がレインにアルカを習うときに、レインはその場歩きしてluklukといった。
この場面がlukでなくselukになってしまう。紫苑は混乱する。セレンは加筆修正するw ぶっちゃけこのシーンを変えたくないんだな。
定不定をアルカ17年の歴史で区別したことはないし、紫苑タソはロシア語検定は取ってない設定だしな(-_-;

で、不定動詞を語彙レベルで示さないなら、不定動詞の開始や継続や完了はどう示すのか。
単にkit, onk, tookを使えばいいだろう。ただ、kit,tookは7相の中で定動詞の相として使っているから、副詞にはできない。
副詞にできないので連動詞にする。kit luk(歩き始める), took luk(歩き終える)のように。

一方、onkだけは元々余っているので副詞のままでいい。luk onk(歩き続ける)のように。
ただ、不定動詞はたいてい単位動詞一回分の長さで終了しないので、lukそのものがluk onkとほぼ同義と見て良い。

なお、将前や影響はどこいった?とは思わないように。
上で述べたとおり、不定動詞は――○――○――にはなれない。
|○○○○|のモデルだからだ。

だが、○○○○|○○○○|○○○○は無理でも、――|○○○○|――なら可能では?と思うだろう。
それなら確かにできそうだ。日本語にすると左の――は「歩き出そうとする」にあたる。
ではこれを何と言うか。kit lukから考えると、sat lukでしょうね。

・瞬間動詞のモデル

魚楠さんのブログに「光る」の例が出ていたので、瞬間動詞も決めておこう。
7相体系だと――○――○――○――になるが、「殴る」「光る」「消える」などの瞬間動詞は経過相が極端に短い。
そのため、――○○――○――に見える。
○○がくっついて、――○――○――に見える。
従って、無相が事実上完了相に見える。bad=badikといっているようなものだ。

瞬間動詞を――○――○――○――にするというのは、経過相を顕微鏡で見て広げるような行為だ。
実際は無相が一個の○になってしまうのが日常的。
それゆえ、累積動詞「歩く」と同じく|○○○○|のモデルが成り立つ。
そこで、bad onkで「殴り続ける」という表現が可能になる。

このこと、つまり無相を一個の○でまとめるという行為を応用すれば、本来経過相がほぼゼロにならないset(殺す)の無相だって一個の○でまとめたらどうかという考えが出てくる。
つまり一般の動詞も|○○○○|のモデルで捉えたらどうかということだ。
この場合、set onkで殺し続けるの意味になる。
ちなみに、luk onkのは経過相でなく継続相といっていいと思うけど、set onkは経過相でなく反復相のほうがふさわしそう。人によってはどちらも反復相と呼ぶかな。

となると、どうもすべての単語においてアルカは|○○○○|のモデルを適応できるということがいえそうだ。
――|○○○○|――モデルの将前はsat連動詞、開始はkit連動詞、経過は無標か動詞+onk、完了はtook連動詞、影響はilt連動詞。

まぁこれもきっと考えていけばもっと長い体系になるんだろうけど、実用段階は|○○○○|、つまり開始から完了までになりそうだ。
さて、すべてのまとめとして考えると、アルカには行為動詞、状態動詞、不定動詞(累積動詞)とそれの論拠となる単位動詞、瞬間動詞がアスペクトの分析に必要なようだ。
もちろん移動動詞などもあるが、アスペクトの分析に使う動詞は上記のみ。

実際言語表現に関わるのは、行為・状態・累積・瞬間のみ。
行為と状態には7相モデル、累積と瞬間には|○○○○|のモデルを使う。
|○○○○|のモデルは広げれば――|○○○○|――あるいはもっと広がるが、アルカとして必要なのは|○○○○|の区間。

結論:アルカのアスペクトは4種の動詞と、2種のモデルを使う。