草案を試みる。どうにかIUPACより簡便なものを作って現行を変えられないかというのが主旨。
先に免責というか泣きごとだが、セレンは文学部卒なので、この程度の浅知恵しかない。
(→ご指摘を期待しています)

(なんというか、結局人工言語ってネーミング作業の累積なんですよね。
 石器時代とか古代レベルの文明で満足すればともかく、ある程度近代的な世界を想定した場合、化学は避けられない、と……。
 というのも、身近なものを言い表せるっていうのが人工言語の到達レベルのひとつの目安だと思ってるんですが、身の回りの製品にはマルチトールとか、そういうのがかなり書いてあります。
 目に入る以上、「それは化学で専門的だから無視よ」っていうわけにはいかないなぁと思います。
 シンジ君並に「逃げちゃダメだ」と思った結果、有機をやる羽目になるのですが、難しいんですよね、この分野……)

開閉


Na+, Cl-, C6H5-のような状態を開と呼ぶ。イオンも基も同様に「開」でまとめる。
NaClのような化合物では閉。また、単体Feも閉。

開は接尾辞aで示す。開音節の場合はn。
閉は何も付けない。

Na(元素記号) Tt
Sodium(物質名) tit
Na+ tita
Cl H
Chlorine hanes(通例han)
Cl- hana

-ideとの違い


英語の場合、陰イオンに-ideを付ける。NaClはsodium chloride。
一方この案では陰陽どちらもaを付けるので、イオンの陰陽を区別するには頭に陰陽を付ける。

化合物中の開閉


Na+はtitaでCl-はhanaだが、NaClにすると閉じるので、tita/hana→tithanになる。
つまり、開は化合物中では閉じる。

炭化水素におけるR-はアルキル基だから、atan(アルカン, alkane)を開いてatana(alkyl)。
ハロゲンXはhaldだが、X-にして開くとhalda(halo)。
従ってハロゲン化物のアルカンは、halda/atana→haldatan。
例えば、クロロメタンの場合、hana(chloro, 塩化)/faana(methyl, メチル基)→hanfaan(chloromethane)。

基と種と接辞


rit(alcohol)は種(chemical class)だ。
それを基に変えるには、種名を開いてritaとする。
つまり、ritaはhydroxyl(ヒドロキシル基)である。

この際、接頭辞hydroxy-と接尾辞-olもritaになる。
このように、種から規則的に基と接辞が作られ、極めて暗記は楽になる。
(物質名から基を作る方法は下記)

基と種と複合語


種名は単体ではそのまま種名を指す。単語ritは単体ではアルコール。
しかし複合語中では基になる。
形態素-rit-はアルコールでなくヒドロキシル基。


faana(メチル基)/rita(ヒドロキシル基)→faanrit(メタノール, methanol)
複合語faanrit中のritは種ではなく基。

「物→基→種」と「種→基」


上では種名を基に変えて化合物を作ったが、物質名から基を作る方法もある。
むしろ、物質名がある場合は、優先的に物質名から基を作る。

ベンゼン、アルカン、塩素のように、もともと物質名を持っているものは、接辞aを付けることで、基になる。
アルカンは物質と呼んでいいか微妙だが、CnH2n+2という意味では物質でいいだろう。任意の同族体ということで。
また、物質名に接辞iを付けると、種名になる。

物質→基→種名

spel(benzene)→spela(phenyl)→speli(benzene derivative)
atan(alkane(一般式CnH2n+2という物質としての))→atana(alkyl)→atani(alkane(種としての))
han(塩素, chlorine)→hana(chloro-)→hani(塩化物)

種名→基

ベンゼンという物質は存在するが、アルコールという物質は存在しない。
アルコールやアルデヒドのように、種名しかなく、物質名がないものは、種名から基を作る。
詳細は上で見たとおり。

rit(alcohol)→rita(hydroxyl)


置換命名法


上の例の通り。まず、主基を複合語の右部に持ってくる。
置換基は左。置換基が複数ある場合は幻字順に並べる。
どの形態素も基なので、すべて最初は開いておく。


yoana(エチル基)/rita(ヒドロキシル基)→yoanrit(エタノール, ethanol)

複合語中の形態素はすべて閉じる。
従って置換命名法では、すべての形態素は最終的には閉じている。

基官能命名法


種名が右に来る。基は左に来る。
上の説明だと、複合語中では種名は基になってしまうはず。どうやって基を種に戻すのだろう。
それは、左に来る基を開いたままにしておくことで実現する。先に例を見よう。


faana(メチル基)/rit(アルコール)→faanarit(メチルアルコール, methylalcohol)

このように、基官能命名法では、複合語中でも左の基を閉じないことで、右の形態素を種に戻すことができる。
faanritだと、置換命名法におけるメタノールで、この場合のritはヒドロキシル基である。
faanaritだと、基官能命名法におけるメチルアルコールで、この場合のritはアルコールである。
メチルエチルケトンのように複数置換基があっても、faanayounaのように複数開いたままにしておくことで、右の要素が種名に戻る。

IUPACではmethanolとmethyl alcoholだが、この案ではfaanritとfaanaritなので、子供でも理解できるくらい並行的で分かりやすい。
逆に聞き違いの恐れが出てくるが、化学的に同じ物質なので、特に問題はない。
また、ほとんど長くもせず、2つの命名法を使い分けているのも利点だ(と思う)。

あと、あさましい利点だが、この手法だと基官能命名法より置換命名法のほうが短くなる。
IUPACでは置換を最優先してあるので、この案と親和する。
つまり、置換で命名されたおびただしい化合物をいったん基官能にしてからアルカに翻訳するという手間が省ける。

――とりあえずここまで、どうでしょう……(>_<)