誰だって自分の人生に「ああしておけばよかった」と後悔することがある。
「もしこの未来を若いころに知っていたら、絶対にこうしなかったはずだ」と思うことがある。

これを活かせば、若返って人生をやり直せるのではないかと数年前に考えた。
この生活を続けたら未来に自分がどうなるかをシュミレートし、その未来の自分がどう後悔するかを想定する。

人間の悩みは多様だが、実はほとんどが年齢と性別に依存している。
若い男は金がないこと、セックスがしたいときにできないことを悩む。だから躍起になって戦う。そのようにできている。
しかし年を取れば一様に悩むことが決まってくる。健康だ。

病気は苦しい。セックスは快楽だが、快楽があることより、苦痛がないことのほうが貴重だ。
しかし目先の快楽をぶら下げられれば、人間は目先の利益を取る。若いころは健康など考えない。
しかし、老人を見ても同じことが言えるだろうか。彼らは始めから老人だったのではない。自分と違う生き物ではない。

この生活を続けたら癌になるかもしれない。
癌になった人間を見ていると、とてもとてもとても苦しそうだ。
我慢知らずの自分にこれが耐えられるだろうか。否。まったく否。
ということは、未来の自分は「若返れさえすれば、俺はこんな未来を選ばなかった。苦しい。助けてくれ」と考えるだろうと予想される。

それが分かっているなら、若返れば良い。
今、この瞬間こそが、若返った自分なのだ。

今自分が欲しいものは将来の自分も欲しいものだろうか。
躍起になって働いて出世して貯金が溜まり、癌になって医療費で貯金が消え、地獄の苦しみを味わいたいだろうか。タバコを吸って、肺がんになりたいか。
タバコも吸わず、野菜を食べて、のろのろ適度に働いて、苦しみのない生活を送り、「ほどよく死ぬ」ことを、今でなく将来の自分は望むのではないか。

人間は馬鹿な生き物で、痛い目をみないと学ばない。
しかし、痛い目を見てからでは遅い。死神は優しくない。地獄に連れて行く前に、散々生き地獄を見せてから、人を殺す。