アッシュさんの名前は古アルカのころの転写ではaxxとしていた。ax(はい)と区別するためだ。
しかし制ではxxのような二重子音で終わる語形がなかったため、axxはaxと同形になった。

一方、メル20年を過ぎた頃から開音節傾向が強まった。例えばlatを[lattq]と読むようになった。
19年まではゆっくりした発話に見られたが、これがスタンダードになってきた。
自然言語に比べアルカの語形は短すぎるため、口語として使うために適度な長さが求められたことによる。

早く言うとき以外は[lattq]と読むようになってきたが、以前として[lat]とも発音される。
アッシュさんがこれに眼をつけ、axxと書いたときは[ax]でなく[axxq]と読むように求めた。
つまり、二重子音で終わる場合は急いでいそうといまいと[axxq]と読むという規則を提案したわけだ。

はじめ、この案は先方で否決された。axxという人名にしか使いようがないからだ。
しかしこれを聞いたメルが演繹音に使用してはどうかとセレンに提案した。
演繹音は作ったわりに実用されておらず、アルカのオノマトペは乱立していた。

演繹音が避けられたのは、一般の単語とオノマトペとの区別がつきにくいためだった。
そこでメルは語末の二重子音を主にオノマトペに使うことを提案。

例えばmetは「落ちる」だが、mettだと「ぽとっ」というオノマトペになるわけだ。
また、meettだと「ひゅー」という音になる。個々のオノマトペを覚えるよりずっと体系的だ。
実際に音も「めっと」から「めーっと」になるので、伸びていて雰囲気が出る。

これをセレンが気に入り、取り入れることにした。