2回だけ魔法を使ったことがある。

1回目は中1のころ。1回目といっても複数回ある。
なぜだか知らんが、カリンカと唱え続けると雨が振るということに気付いた。
何度か実証したところ、あまりに当たるので魔法だと信じた。

今考えると、恐らく雨が降りそうなのを空気で判断し、
そのことがカリンカの魔法を思い出させ、実験に至り、
そして実際雨が降って魔法だとさらに確信した――
というところだろう。

ちなみにこのことと時期は神無アルカで確認できる。

2度目はいつだろう。わりと長期で、中高のころ複数回。
最もリディアたちと親密だったころで、毎日が楽しかったころ。
というか、彼らと語らうことが唯一の幸せだったころ。

子供なりにリディアたちと将来ずっとこうやって楽しくしてはいられないだろうと感じていた。
付き合いも難しいし、日本にいるわけではないし、今みたいにアルカも確立していないし。
そして何より自分も大人になる。生活が変わり、思考が変わり、このままの付き合いが続かないのではと案じた。

そこで中高のころ、自分はこう何度か唱えた。
「もしリディアたちを裏切って捨てるようなことがあれば、その俺は死ね」
これが2度目の魔法だった。裏切る俺は俺ではない……という意味だろう。

22を過ぎたころにはすっかりこの魔法について忘れていた。
つまり、リディアたちと疎遠になっていた。少なくともあのころのような愛着は……。

さて、自分の体調が悪くなりだしたのはこのころからだ。
胃やら腰やら肩やらを壊し、その他もろもろの部位や精神も病んだ。
それらの原因をひとつずつ掘り返していくと、いずれもリディアかリディアの唱えたアルティスに逆らったときなのだ。

そしてこういう出来事が重なり、ふと魔法について思い出した。
自分は中3のときから連続した魂を持っていると思っていた。
だが、いつの間にかあのころの自分は死んでいた。とっくに別人になっていた。
純粋にリディアたちとの時間を愛でる自分はいなくなっていた。
あぁ、昔の自分が祈ったとおり、裏切ったから俺は死んだんだなと思った。
死んだから、こうして別の人になった。苦しい体を持って。

最近このことに気付き、自分に帰ろうとしている。
くしくも去年の5月以降、リディアと仲がよく、彼女に対する想いも篤い。
メルを除いてほかの女はいいかと思うようになり、健康はアルティスに任せ、思想はミロクに任せるようになった。
つまり、オールリディア。浮世離れしそうだが、逆に安定感がある。

去年くらいラブラブwなのは中2以降だから、中2の状態に戻れればと思う。
返す返すも中2のときが心身ともに最も好調だった。
次が高3で、次がかろうじて大4。その後は屑みたいなものだ。

思えば中2と高3はリディアと密だった。
リディアの慕うルシフェル像は高3のときのものだし、向こうもそう見ていたことになる。
あのころに戻れればなぁ……。それが、3度目の魔法か。

そして心身ともに健康になった俺が解脱しリディアと平安に生きられれば、それが最後の魔法だろうね。
魔法は4回までだしさ。ほら、Final Fantasy 4なだけに。