第一アルカ消滅

理由
宇宙の球が作った言語は身体性もなければ認知もない。その後に続く人間の言葉としてつなげるのは不自然。作っても二度手間になる。
もともとアルテアルカを作ったのは、制当時セレンしかアルカを使えなかったから。
ユーザー1人でも内省用でも言語は言語といいたかったから。
今はリディアはじめniasさんなど、ネットにもユーザーがおり、確実にユーザーが複数存在する。
その点でアルテアルカの「ユーザー一人でも言語は言語」というドグマに固執しなくてもよくなった。

愛し合う男女が言葉を紡いだというほうが、物語としてしっくりくる気がする。

<言葉の歴史>

・セルト

セルト0年、アルテがエルトとサールに分裂。エルトは白い球、サールは黒い球。
彼らは自らの住処としてアトラスを選んだ。アトラスの環境に合わせるため、彼らはルサージュを行い、人の形を選んだ。詳しくはlsaj参照。
エルトがフィーリアを選択し、サールを連れて草原に降り立つ。エルトはサールを指差して「サール」と言い、サールはエルトを指差して「エルト」と言った(最初の命名)。

彼らはある物質や概念が持つ本来的な名前を聞く能力を持っていた。エルトはエルトという名を定められるべく生まれた存在で、サールも然りである。ゆえに彼らは相手に自分の名を言われた際、それが確からしいと感じた。
エルトは次に空を指してjinaと言った。サールはそれを確からしいと感じた。
サールは地を指してkalと言った。エルトはそれを確からしいと感じた。
彼らは同様にして身の回りの概念の名前を確認していった(最初の語彙の獲得)。

彼らは物だけでなく概念や行為や状態の名前も知っていた。
例えば愛するという行為はtiiaという名前を持っていることを知っていた。
上下のような概念や、大きいのような状態も適切な名前を知っていた。
概念の名前を彼らはeesteと呼んだ。(名詞以外の獲得)。

また、彼らは高等な知能を基に、自らの認知に基づいた命名も行った。
サールは草原にkalmo(下の場所)と名を付けた(人間の認知に基づく造語)。

彼らはその名を発音するときに、少し音を変えても意味が変わらないものと意味が変わるものを分類した。
すなわち、eltのエを口を横に開きながら発しても狭めながら話しても同一の意味を示すが、縦に開いてアにしてしまうと別の意味になるというような分類をした。
こうして分類した音声は29種である(音韻の獲得)。24子音の5母音である。

エルトはサールを抱こうとした。しかしサールは浮かない顔をしている。エルトは戸惑う。サールは悲しげな顔で近くにあったaspil(チョウノスケソウ)を手に取ると、エルトは彼女は花がほしいのだと察し、アルカットまで飛んでいき、花を観察してフィーリアに戻り、造形術(→kulul)を用いて花畑を作った。そしてこの地にminakalmoと名付けた。
サールは喜んで花畑に寝転び、紫苑を取った。エルトはそれを見てsaalminaと名付けた。

エルトがサールを寝せ、覆いかぶさろうとすると、サールはおなかを押さえて泣き出した。空腹である。
エルトは辺りを散策し、木の実、魚、動物の肉を持ってきて、サールに与え、自分も食べた(食事の提供)。

エルトがサールを見ると、サールはとたんに恥ずかしそうな顔をして、体を隠した。
裸を見られるのを恥ずかしいと感じたためである(恥の獲得)。
エルトはミナカルモに咲くコットンを手に取ると、中から綿を取り出した。
これは使えると考えたエルトは造形術で服を作り、サールに着せ、自分も纏った。
上下を覆う筒状の服で、手足のところに穴が開いており、首からかぶるように着る粗末な服だったが、白くて清潔で上質だった(衣服の提供)。

サールが喜ぶと、エルトはふたたびサールを寝かせた。
性交に集中するために温度調節の魔法を切ったところ、サールが寒さで震えた。
エルトは石を切り出し、造形術でイグルーを建てた(住居の提供)。
サールを入れると、エルトは中で火をたいて暖めた(火の使用)。

満足したサールはまず自分を指差し、次にエルトを指差し、"non dyussou tiia"と言った(最初の文)。
指差しの順番で文が構成され、SOV語順ができた。
こうして神々は結ばれた。

コミュニケーションの手段に肺臓気流を利用する姿にルサージュしたため、サールはエルトを誘惑しようとして、自らの息に芳香を乗せた。芳香は桃の香り(主成分蟻酸エチル)であった。
エルトは感銘を受け、サールに共感して自らの息に薄荷の香りを乗せた(言葉で求愛することの重要性を強調)。

エルトはkalを動詞「場所を占める」として使った。
"del ruxilo kal kulala kui"は重文で「私は家を場所として食べ物を食べる」の意味。
このkalが文法化し、「〜で」を意味する後置詞になった(格明示法の獲得)。
与格はalとkerで示され、着点含意は前者、方向性は後者が担った。
また、状態を指す言葉は前置された(形容詞の獲得)。

彼らは1年後に再会することを約束した。来年から神の逢瀬が始まることとなる。

ここで彼らが作った言語が神代アルカで、最初の言語である。

・アルテムとユーマの一族

ユーマが生まれると、彼女は生まれながらにして神代アルカを習得していた。
同時に、歪みから生まれたテームスも神代アルカを習得していた。
ただしテームス自体は喋るのが得意ではなく、知能の高くなく、言語運用能力は貧弱だった。
テームスから生まれた悪魔メルティアやベルトらも神代アルカを習得していた。
アルミヴァもまた神代アルカを習得して生まれた。
この時代はほぼ分裂に等しい産み方なので、知識を共有している。
最初にアルカを学んだのはアトワーユとルノである。

神々も人類もひとつの言語を使っていたが、離れて住みだしたため、言語が長い時間を経て分裂する可能性が出てきた。
そこで悪魔ベルトが世界各地にアンシャンテという魔法装置を作った。
泉の湖面に魔法をかけ、これをテレビのようにして使う通信装置である。
泉はエルシェルトというルナパネルを用いている(→elxelt)

各大陸に分裂した人類もアンシャンテのおかげで同一の言語を使うことができた。
また、アズゲルまでは人間も長生きだったため、言語変化自体が地球のヒトと比べて遥かに緩慢だった。
しかし音韻変化やその地域にしかない名詞の獲得などは、アンシャンテをもってしても防げなかった。
ゆえにアズゲル開戦までに音韻レベルおよび語彙レベルでの変化はあった。
しかしそれはイギリス英語とアメリカ英語程度の距離でしかなかったため、この時代はまだ神代アルカが通じていた。

なお、音韻変化したものは神代アルカではなく「リュディア語」のようにその人種の名前を取って命名する。
ただ、上述のとおり、リュディア語と神代アルカの差はほとんどない。

・ラヴァスとバベルの塔

ヴァステでの言語状況はアルテムと変わらない。
一方、ラヴァス後期になると、神々が情報漏洩を防ぐために各地のアンシャンテを破壊して周った。
破壊されたアンシャンテは修理されることのないままラヴァスが終わり、神々はアルフィへ去った。
残された人類はアンシャンテを失い、寿命も短くなっていたため、ここから地球のヒト同様、言語の変化が起こることになる。
いわばラヴァス後期がバベルの塔の崩壊であり、ユーマの一族はそれから1万年ほどかけてアルカを変化させていく。

ただ、同じアルカ語族である点が地球と異なる。
言ってみれば地球上すべてが印欧語でできているようなものなので、語彙の根本的な部分などはこの世に一通りしかないことになる。

アズゲルの時代には北半球はすべて、南半球も大部分は人類が到達していた。
この時点でほぼ同じ神代アルカを話していたため、その後の言語の変化といってもタカが知れている。

・アルディア

しかしアルディアになると互いに意思疎通ができない程度には変化していたため、アシェットが新生アルカを作る必要性があった。
アルディアでは神は神代アルカを、人類はそれぞれの言語を使っていた。
アルバザード語は古代リュディア語を基にできた言語で、リュディア人は祖であるガルヴェーユ人と近い人種であることから、言語自体も神代アルカと近かった。

かといってアルバザード語は神代アルカと様々な点で異なっていた。
むろんルティア語も別言語になっていた。

アシェットのセレンは使徒を集めていったが、各人が土着の言葉を話すせいで、意思疎通が困難になっていた。
このときのアトラスの共通語は神代アルカであり、地球の中世でいうラテン語に相当する。
ところが人々の神代アルカの質は悪く、神からすれば「日本人が中国人の日本語を聞いたとき」のような違和感を感じていた。

メル11年ごろ、セレンはアルバザード語や神代アルカを基に、使徒同士で簡単に覚えて使える言語を作り、制アルカと名付けた。
これを見た神々が面白がり、セレンに新しい神代アルカの作成を依頼した。
神々は人類と結託してテームスを倒す必要性を感じており(神を説得したのはリディア)、アトラス全土またアルフィ全土に共通する言語を欲した。

そこでセレンは制アルカを作り込み、メル18年に提案したが、神はこれを棄却。
制アルカは呪文の材料にならないというのが原因であった。
エルトとサールが概念に名を付けたように、概念にはそれらがそうと呼ばれたいエーステがある。
制アルカの機械的な作り方では語彙がエーステを正しく反映しておらず、呪文として成立しないためである。

そこでセレンは新生アルカを新たに作り、提案。神はこれを受け入れた。
セレンは当初メルテーブルによる語彙をたくさん用意した。これは世界の人々に学習しやすくするためである。
しかしこれも呪文にならないとして随分削除され、神がセーフと認めたものだけがメルテーブルとして採用された。
エーステは1概念に1つだが、エーステと類似した音なら許容された。例えばfaanに対するfiimはメルテーブルとして許容された。怠けるという概念が持つエーステがfiimという音を許容したためである。

神々はエリス神を使って新生アルカをアトラス全土に広め、人々に学習させた。
しかし対応できない老人や、思想的に反対するものがおり、一枚岩にはならなかった。

メル25年、アシェットはテームスの暴発の兆候を観測。アトラス全土に緊急警報を発令。テームスの暴発は強力な衝撃波となってアトラスに降り注ぐものと算定された。だが衝撃波はセレスを持つ者にしか作用しないと分析され、からくもアトラスの破壊は免れた。しかし人類には有効で、アシェットは各国から対策を求められた。
アシェットは神々と協議し、神の加護を要請した。衝撃波はアルフィには向かわないためである。神はこれを受け入れたが、防壁の作成には多量のヴィルが必要と説いた。すなわち祈りの力である。
問題はそれを何語で書くかである。前述の通り、人間の言語は神代アルカから変質しすぎ、多くのエーステを失っている。
また、神代アルカは既に人類が失っており、高学歴の人間しか習得していない。その上、彼らの神代アルカも神から見れば不自由なものである。

そこでメル11年の計画どおり、セレンの作った言語が選ばれた。
問題は、テームスの衝撃波を緩和する呪文が暴発寸前の観測を待たないとできあがらないことであった。
呪文は暴発の寸前にエリス神を通じて世界中に報道される。
このとき、人々は表示された新生アルカで祈りを唱え、神にヴィルを提供するとともに防壁を作る。
祈りは当然本人が意味を理解していないと成立しない。心のこもっていない「すみませんでした」では無意味というのと同じことである。
これが何を意味するかというと、国民は暴発までの3年で新生を習得しておかねばならないということだった。
アシェットがこれをアトラスに報道すると、多くの人々が新生を共通語として法律に盛り込み、新生アルカの語学学校をたくさん建て、習得を促した。
このとき、セレンらの子供たちは唯一のネイティブとしてもてはやされ、言葉の賢しいルシアは幼女先生と呼ばれるようになった。

メル28年、リュウは研究の結果、テームスの起こす衝撃波を無効化させる呪文を見つけた。
アシェットが呪文を作って報道したと同時に衝撃波が発生。
呪文を唱えられた者は神の加護で防壁が増強され、生き延びることができた。
習得できなかったものはこの時点でテームスに殺された。
こうして時代は完全に神代アルカから新生へと変わった。

・ナディア〜ヴェレイ

テームスの脅威が去ると、現金な人類はさっさと新生を捨てて自分たちの基の言語の持っていた性質を復活させた。
ルティア人はルティア人らしく喋るというようなナショナリズムに走った。

・アレイユ

ミロク革命でミロクはある程度乱れたアルカを正したものの、現実に世界中の言葉をアルディアの時代にまで戻すのは不可能と考えた。
従ってアレイユでも方言程度のレベルでは新生アルカは分裂している。