<音韻創造>

ガレットの配列のことを晄基配列という。
ヴィルの晄基配列は一握という単位につき(((4 !) / 2)^4)^16 = 1.16842206 × 10^69個の配列パターンがある。
従ってまったく同じ晄基配列になることは現実的にありえない。

また、言語というのは音韻でできているが、音波は音声でできている。
アルカで音声[p]は音韻/p/だが、音声[ph]も音韻/p/である。
しかし両者の音波は異なる。よって、[p]と[ph]が作る晄基配列も微妙に異なる。
だがその差異は膨大な晄基配列の組み合わせからいえば矮小なものであり、[p]も[ph]も酷似した晄基配列を持っており、魔法の結果にほとんど影響を与えない。

影響を与えない範囲に音声を区切ったものが、かつてエルト神とサール神が行った音韻創造である。
彼らは音声を29種の音韻に分けた。音声は無限にあるが、晄基配列を気にして音韻を1000にも増やすと言語として使いづらい。
一方、音韻を3にしたら今度は異なりすぎる音声同士を同じものとして発音してしまうため、魔法を使うための呪文が誤作動を起こす。
そのちょうどいいバランスのとれた数が29であった。

29というのは完全な縛りではないため、彼らの話したフィルヴェーユ語以外では異なる音素数を持つことがある。
例えばアルカは25音素であり、これでも問題なく魔法は発動する。
しかし稀に誤作動の起こるコード(呪文)もあり、そのときは古音のSerなどが用いられることがある。

<ヴェルディーユ>

晄基配列は結果論である。結果的にある晄基配列に近くなれば、同じような魔法が発動する。
これは味によく似ている。メロンは当然メロンの味が当然する。しかしキュウリにハチミツをつけてもメロンの味がする。
食材の組み合わせを晄基配列と考えてみよう。入れる材料が異なっていても、結局同じような晄基配列になれば、同じような魔法(味)になるのだ。

概念には本来的な名前のエーステがあると述べた。
しかしエーステが作る晄基配列と同じような配列を作る語形があれば、それも同じような魔法を生むのだ。
そしてそのようなエーステの代替として使える語形がヴェルディーユである。
例えばメロンがエーステだとすると、キュウリ+ハチミツという代替品がヴェルディーユとなる。

むろん、メロンとキュウリ+ハチミツの味は完全に同じではない。
そこがポイントだ。

ヴェルディーユも当然エーステと若干異なる。つまり、若干魔法の作用が変わる。
これを応用すれば、魔法を改良したり、属性を変化させたヴァリアントができるというわけである。
例えば同じ魔法の火の属性を弱めたり、同じ魔法を消費ヴィルを少なく放ったりといったことができる。
ここにヴェルディーユの存在意義がある。