マレット語

meltia 85'0000にガルヴェーユを追われたユーマの一族はシフェル人とマレット人に分かれた。
マレット人はシージア人とファベル人に分かれた。

シージア人はその後ルティア人、リーゼル人、リディア人、ハノイ人、ケヴェア人、ハーディアン人に分かれた。
このうちルティア、リーゼルならびにファベルはシフェルとほぼ変わらない言語を用いていた。
一方、リディア、ハノイ、ケヴェアは独自に言語を発達させ、東洋魔法を築く。

アトラスにはエーステ理論があるため、できるだけ語形をエーステに近づけようとする。
しかしエーステにあわせなければ魔法が使えないわけではない。
でなければankletした単語は呪文で使えないことになってしまう。
faiという語形は火の属性を多く持つので火を表すのに都合がいいという理由でしかない。

だが逆に言えば、適切な語形があれば、人類はおいそれと言語を変えない。
そうでなくてはならないというほどではないものの、かといってエーステは呪文の指針にはなるので、わざわざ言語を変えようとも思わない。

ということは、魔法を使わない民族ほどエーステがどうでもよくなるので、地球と同じような変化を経験する。
ハーディアン(現アルティア)人がそうである。
また、逆に魔法を独自の体系で作ろうとするものは、自然言語的でなく計画的に言語を変えることがある。
それがマレット語である。

マレット語はリディア、ハノイ、ケヴェア人の言葉である。
つまりシージア人の末裔のうち数民族の言葉である。
本来ルティア人もマレットなのに、アレイユにおいてマレット扱いされていないのはこの時代に原因がある。
現代でマレットというと、ファベル人の末裔と、これら3民族を想像する。ルティア、リーゼル、ハーディアンは含まない。
以下リディア、ハノイ、ケヴェア人を便宜上マレット語人と呼ぶ。

なお、ハーディアン人についてはシージアから分派して西に移動した民族で、virが弱くyunoが強いまとまりだった。
彼らはアクオリアを渡ったころにはvirを失っており、これが原因で独特な文化を築くこととなる。
従って彼らはマレット語人に含まれない。

マレット語人は音声より文字に頼った魔法体系を作り上げた民族である。
ルティアとリーゼルは音声に頼ったため、マレット人ながらシフェルと同じ魔法体系を持っている。

彼らは文字を重視し、魔法陣を使う。
そのため音声はできるだけ簡略化して合理化しようという流れになった。

というのも、魔法陣を書く際に文字の名前を、すなわち単語の音声を呼んだからである。
単語の音声を喋るとその文字が魔法陣内にインプットされる。
そのため、音声上の語形は必ずしもエーステを反映していなくともよく、それよりもむしろ短さが重要であった。

なお、音声で文字を呼ばずに杖などで書く手法もあった。
杖で書くほうがより強大な魔法になる。
後にマレット語人は杖を主に使って魔法陣を描くazer系の魔法を使う民族と、音声を用いて魔法陣を描く、つまり魔法陣を描く必要のないdixentやanvel系の魔法を使う民族に分かれることになる。

ただ、マレット語の成立のほうが東洋魔法の細分化より時代が早いため、いずれの民族でもマレット語が用いられる。
マレット語の特徴は幻字の形を音価に置き換える点である。

マレット語人にとってエーステは重要でなく、文字の形が何より重要である。
しかしエーステは概念が本来的に持つ名前であり、ハルマ(幻字)はレイハ(概念象徴)のハーメル(概念面)を写し取ったものであるため、エーステとハルマは互いに別次元の概念である。
つまり、エーステを見てもハルマは分からず、ハルマを見てもエーステは分からない。両方別個に覚える必要があった。

マレット語人は魔法陣を使うため、ハルマが分からないとどうにもならない。
そこでマレット語人は工夫して、単語の音価でハルマを表すことにした。
エーステを捨てる代わりにハルマの形がどのようなものであるか音価で説明したのである。

マレット語の単語の音価はフィルヴェーユとはまったく異なっており、字形を説明するものになっている。
魔法の関係で文字を大切にする文化だったため、文字についての発展はシフェル人を上回った。

音節構造は(C)V(V)(C)であり、規則的で単純である。
声調は持たず、高低アクセントを用いる。
文法に関してはフィルヴェーユ語とほぼ同じであるが、時を経るにつれて民族ごとに少しずつ変わっていった。

さて、マレット語は実際にはリディア語、ハノイ語、ケヴェア語に分かれる。
これらはさらにこの後細かい言語に分かれていく。

リディア人とハノイ人は秘術dixentを発達させた。
ケヴェア人はazerを発達させ、盛んにファベル人との交流を行った結果、azerはファベルへも広がっていった。
なお、ファベル人そのものはファベルで呪術anvelを発達させた。
従ってマレット語を話すのはリディア、ハノイ、ケヴェア、ファベルであった。

ハノイ人の大部分はvilhanoiに住み、主にそこで秘術が盛んとなった。
ハノイ人の一部はリディア人と混血し、サヴィア北西岸に住んだ。
その後、現イールゥートから海へ出た一部の民族がハーディアンを通過してアルカットへ入り、ハーディアンの西にカルセールを築く。
これがカルセール人であり、彼らは移住後はハーディアン、メディアン、サルディーン、アルディアル、スカルディアなどと混血を進めた。

しかしラヴァスになるとカルセールにサルトが入植する。
このときシフェル系と明らかに異なるマレット系の言語が神々に通じず、神々は翻訳の神エステルを生む。
だが、翻訳の手間がかかり、意思疎通が面倒なため、サルトはシフェル系の民を重用した。

その結果相対的に追いやられたマレット系カルセール人は南方へ移り、メディアンへ入った。
神々の技術や戦闘のノウハウを盗んだマレット系カルセール人はメディアンに攻め入り、支配権を獲得。
こうしてラヴァスでは既にメディアンの主権はシフェル系でなくマレット系が持っていた。

地理的に隔絶したサヴィアやケヴェアと同じマレット系の言語を現メティオが持つのはそのためである。
メティオ語はマレット語であり、その言葉は独特であるため、往々にしてアルバザードやルティアは理解することができない。
ときに、純粋なシフェルはアルバザードだけで、ルティアはもともとマレットの土地だったのがアズゲルでシフェル化されたもので、メティオはマレット系である。
そのため、列強3国はシフェルとマレットの系列がちょうど1.5:1.5で含まれているといえる。

さて、ケヴェア語の一部はマレット語をさらに声調言語へと発展させた。
(C)V(V)(C)の音節末の子音が消えていく過程で声調が発生した。
この言語は歌うように話す点が特徴的で、この言語を用いたケヴェア人の部族は海を渡って現フレマゼルに到達し、独特な文化を築いた。

この声調言語はフレマゼル島及びケヴェア北西部で使われる。
彼らは詩を歌のように詠むことで魔法を使う。
歌と踊りに呼応して魔法陣が描かれ、歌を歌っている間中ずっと効果が継続するという特殊な魔法である。
フレマゼル島はエルトアの迷宮ファティスと繋がっており、幼少期のミルフはここで歌魔法を習得した。