・所有格と所有代名詞と普通名詞とネイティブ

普通名詞の所有代名詞は中性代名詞eを使ってe'xia(ルシアの)のようにする。
e'soretは「青の」で、t'imelは「黄色の」だ。

「彼女の」はluutだが、「ルシアの」はe'xiaとなる。
代名詞だけ強変化で、普通名詞はe'を使う。


ところが、ルシアを見ていたところ、非常に大きな問題に気付いた。
ごうつくルシアはユルトと1個ずつ分けたおもちゃをたいてい奪うのだが、そうすると当然リディアが怒るわけだ。
そんな日常のシーンの中であることに気付いた。

リディアが片方を指して「これ誰の!?」と聞くと「しあの!」という。
「じゃあこっちはゆうちゃんのね」というと「ううん、しあの!」という。
俺は横で「ちょwおまw」と思いながら見ていたが、異変に気付いた。娘が"tu et xian!"と答えているからだ。

xianというのは属格か?あるいは「しあちゃん」という意味か?
いずれにせよ、どうして"tu et e'xia"なり"tu et e xia"なりを使わないのだろう。
ここでうっ……と思った。
大人は文法変更に理性で対応できる。しかしネイティブの子供はそうではない。
こないだの変更をリディアは恐らく彼女に教えていないし、教えたところで恐らく理解できない。
どうもルシアにとって「しあの」はxianらしいのだ。

だが、もう少し観察していると面白いことに気付いた。
「ゆるとの」は"e yult"というのだ。
もしかして母音で終わる単語だと属格にするのか?と思った。

ところがそれはないと判断した。
というのも、いつだったか「メルの」という意味で" e mama"といっていたのを思い出したからだ。
どうも「しあの」だけ特殊で、属格を使うらしい。

ということは、属格の意味範囲が属性だけでなく所有にまで侵食しているということだろうか?
だが、属格は非常に使いづらい。
lei miirenはいいとして、ミロク=ユティアに関する本の場合はどうすればいい?lei mirokon yutian??
それに、名詞でなく名詞句だったらどう屈折する?lei fiananはいいとして、lei fianan soren??
eのほうが明らかに使いやすい。

どうも、たまには作者の権利を行使して、属格を滅ぼしたほうがいいように思える。
普段はソーンの実用という強さに負けて一歩引いているが、ある変更が合理性のない混乱にすぎない場合は、統制するのも作者の仕事ではないのか。

ところでe'xiaだが、Eにアクセントがあると述べたが、どうもそうではないようだ。
実際聞いていると、e'xIaのように発音されている。

さて、ふたたび"tu et xian"だが、「しあの」だけ属格が使われているのはどうもおかしい。
ネイティブとはいえまだ2歳で言語もまともに喋れないのだから、恐らくこれは属格でなく指小辞の「しあちゃん」のほうなのではないか。
つまり、「これしあちゃん!」で「これ私のよ」という意味を指しているのではないか。
あと、ふだんメルが「私の」を"noan"といっているせいで、なんとなくnを付けてみたというだけかもしれない。子供にありがちな類推による誤用で。