文化・風土が支える言語



先験語にせよ後験語にせよ、これまでの人工言語は文化と風土を考慮してこなかった。
新生人工言語とは「文化と風土を踏まえた人工言語」を意味する。
では、なぜ人工言語には文化と風土が必要なのか。

まず、人工言語の上位概念である言語が文化と風土を必要とすることを説明する。
たとえば日本語で米と稲は別物であるが、英語ではどちらもriceという。
同様に姉と妹は区別するが、英語ではふつうどちらもsisterである。

riceの例は、日本が米を常食とする文化・風土にあり、英語を育てたイギリスが半農半牧の文化・風土にあったことで説明できる。
sisterの例は、日本が長幼を重視する厳しい年功序列の文化であるのに対し、イギリスがそうでないことで説明できる。
海に囲まれ、夏に温度が上がり、大量の雨が降る。そういう風土だからこそ日本の米文化があり、riceは細分化される。
逆に、牧畜を営んでいたからこそイギリスで牛はcow,oxなどと細分化される。

こういった言語例は文化・風土が関わっている。
もし文化と風土が無ければ、こういった言語例は説明できない。
両者が無ければコメという作物をどこまで細分化すれば良いのか決定できない。
ゆえに言語には文化と風土が必要である。

上位概念の言語が文化と風土を必要とするなら、下位概念である人工言語もまた然りである。
しかし、論理的に言われても実感には至らないだろう。そこで例を挙げる。

たとえば、人工言語を作る際、米や妹や牛といった単語は作ることだろう。
その人工言語はいずれかの文化・風土を参照しなければ、単語の意味を確定できない。
文化がないと妹は妹のままでいいのか、或いは姉妹とまとめるべきなのかといった判断ができない。
この意味で人工言語は文化と風土を必要とする。

自然言語には自然文化と自然風土が自動的に備え付けられるが、人工言語はそうではない。
元々存在しないところに言語を作ったのだから、備え付けの文化・風土があるわけではない。
そこで、人工言語は文化・風土を調達することになる。
こうして文化・風土を持った言語のことを新生人工言語と呼ぶ。

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