・アルカのNA構造は変化するか

アルカはSVOのNA言語である。

松本『世界言語への視座』p215によると、SVOを持つ484言語のうち323語がSVO PR NG NA構造を持つ。
これはロマンス諸語やインドネシア語が入る。

このうちNAがANとなるものは42で、印欧諸語が例に挙がっている。
英語がこの構造なので、日本人には馴染み深い。
だが意外なことにこの構造は上記の8倍もレアである。
つまりアルカのほうが頻出する構造ということになる。

ロマンス諸語というとフランス語がそうだが、フランス語もgrandなど、一部の形容詞は前置される。
アルカも同じで、否定を示す語や指示語などは前置される。
たとえば否定は文の真理値を逆転させてしまうので、なるべく早く聞き手に知らせる必要があるためである。
歴史的経緯ではなく、伝達効率を考えて作られている。

特殊な理由があって前置しているので、これがほかの語に及ぶことは考えづらい。
松本の頻度をとってもそれが自然である。SVOだと形容詞は後ろに来るほうが自然だ。
また、形容詞を前置したら今度は関係詞節も前置したくなる。
ところが英語でもそうなとおり、関係詞節を前に持っていくのは違和感がある。

<続き>

481   名前:  xektan   2009/09/15(火) 14:56:18  

>アルカのNA構造は変化するか
変化する余地はあると思う。作者が意地になって抵抗しなければ(笑)

AN になりやすい場合としては二通り。
1) 短い語や親しみのある語を先に出す。
2) NA とは異なるニュアンスを持たせる。

1) は名詞より形容詞の方が語形が短かったり頻度が高かったりする場合でフランス語と同様。
情報を効率良く伝えるなら認知処理が楽な情報を先に出した方が良いと思う。
ロマンス諸語で目的語が代名詞のときは SOV になるのも同様の事情ではないかと推測。
英語風に AN だけど関係詞節は後置というのも長いものは後回しの原則に適う。

2) は基本が NA の言語で敢えて AN とすると特定する意味を含めることができると思う。
AN だと N がいくつかある中で A の特徴のやつと言うときに使える。


ときに疑問が一つ。

>松本『世界言語への視座』p215によると、SVOを持つ484言語のうち323語がSVO PR NG NA構造を持つ。

この数字から「SVOだと形容詞は後ろに来るほうが自然だ」と結論付けているが
http://www8.atwiki.jp/arbazard/pages/745.html
では「SVOはSOVやVSOから発達したものが多い」とあり、ならば SOV から発達した SVO なら AN の方が自然なのでは?
482   名前:  しゅわるつぉ   2009/09/15(火) 23:37:03  

横入りで失礼します  このところの流れに関係あるかどうかちょっと微妙な疑問ですが……


私がアスガル語の語順を決めた際は

 Q1.“黒板”は“blackboard”か“boardblack”か?
 A1.アクセント位置を最後尾に固定するからには“blackboard”の方が自然だろう
 Q2.ならば“黒い板”は“black board”か“board black”か?
 A2.“黒板”が“blackboard”なのに“黒い板”が“board black”では違和感がある。
    よって“黒い板”=“black board”としよう

という感じの経緯だったわけですが、アルカの語順は“blackboard”かつ“board black”と
なっているわけですよね?  実際に使っていて、このあたりに違和感を感じる事は別に
無いのでしょうか?  実に今更な疑問で申し訳ありませんが、一連の流れを眺めていて
どうしても気になったもので……

それから、もしセレンさんが古アルカからの歴史的経緯を尊重する必要無く新たに言語を
一から作り直す立場になった場合、やはり今のアルカと同じ語順を採用されますか?
アルカの場合はどうしても過去の積み重ねを無視して動くわけにはいかないでしょうから、
セレンさんが素の状態で今どういう言語観を持っていらっしゃるかが見えにくい面があり
一度伺いたいと思っていたところだったのです
483   名前:  seren   2009/09/16(水) 06:09:15  

>「SVOはSOVやVSOから発達したものが多い」とあり、ならば SOV から発達した SVO なら AN の方が自然なのでは?

SOVからANを持ったSVOに発展することはあると思いますが、それでも類型論的にはNAのほうが優勢です。
確率的にはアルカはNA構造を保つ公算が高いといえます。
むしろ突然ANになったほうが英語とのアポステリオリ性を疑われる恐れがあります。

日英でANに慣れているのでANのほうが自然に見えますが、世界的にはANは優勢ではないようです。
SVOやSOVに関わらず、です。
アルカはこの現象に準拠しています。
上掲からソースを上げておきます。

http://cid-dd6eff55a81cbf67.skydrive.live.com/self.aspx/arka/NA1.jpg
http://cid-dd6eff55a81cbf67.skydrive.live.com/self.aspx/arka/NA2.jpg

>アルカの語順は“blackboard”かつ“board black”となっているわけですよね?  実際に使っていて、このあたりに違和感を感じる事は別に無いのでしょうか?

厳密に言えば最初は違和感ありました。でもそれは単に日本人だからです。
実際に使っていて違和感はありません。

ところで合成語と句の語順が同じな言語のほうが、区別に困ることがあります。
white houseとWhite Houseはアクセントで区別するしかないのですが、日本人などは両者のアクセントを間違えやすいので、聞いていて「ん?」と思うことがあります。

もし英語がアルカと同じ語順ならfirraとra firになり、明らかに区別できます。
句と合成語の語順が異なることでかえって弁別的なこともあります。

>もしセレンさんが古アルカからの歴史的経緯を尊重する必要無く新たに言語を一から作り直す立場になった場合、やはり今のアルカと同じ語順を採用されますか?

歴史的経緯を取り除いた場合、文化や風土も取り除きますか?
それによって返答が変わります。

1:風土は残す場合

a:SVOはSOVやVSOから発達したものが多い。(http://www8.atwiki.jp/arbazard/pages/745.html)
b:一般にアルカのような文法は、ピジンないしピジンのように多くの民族と接触した言語に多い。

a,bから、アルカが日本のような極東の島国であれば、言語の交わる頻度は少ないので、世の中で最も多い類型のSOVにしておきます。
逆に大陸の交易国で平地が多く、南北を高山に囲まれた土地で、シルクロードのような東西に長い行路があれば、現在のアルカのような語順にします。

これは必ずそうすべきということでなく、異言語接触の頻度からシミュレートしたものです。
実際に中東の国がSVOになっているわけではありませんから。

2:風土も取り除く場合

単に最も頻度の高いSOV PO GN AN語順にします。
日本語と同じで、僕にとっても負荷がないですし。
484   名前:  seren   2009/09/16(水) 06:19:38  

>これは必ずそうすべきということでなく、異言語接触の頻度からシミュレートしたものです。
>実際に中東の国がSVOになっているわけではありませんから。

追伸。
僕はもともと学生時代にこういうことを研究していました。
地理的要因が言語の統語論や音韻論に影響を与えるかどうかという研究で、言語学的には一般に認められない現象について扱っていました。

レアです。しかも負け戦濃厚です。教授にはいい迷惑です。
でも、小さいころからたくさんの外国人に触れてきた自分には、地理的要因が言語に与える影響は意外と大きいのではないかと感じていたので、曲げませんでした。

実際に、地理的要因には、法則とまではいかないまでも、傾向を作る程度の影響力があると思います。
例えば中国語では南に行くほど声調が増えるというのは言語学でも認められています。ただそれは観察の域を越えず、そこから推論に進んでいません。
簡単にいえば「そうなってるけど、なんでだろねw突き詰めると19世紀的な民族差別に繋がるやもしれないからヤだよwww」的な本音が見えます。