我々は「座った」と聞くと、尻が座面に着いた瞬間を想像する。それは正しい。
だが、「飛行機に2時間も座ったから、しばらく歩いていたい」の場合の「タ」は何だろう。
過去と言えばそれまでだが、「今飛行機に2時間も座ったから、しばらく歩いていたい」と言えることを考えると、過去の「タ」ではないのではないか。

「座った」というのは実は「座り終えて、これから立つところだ」という意味もある。
飛行機の例の「タ」は実はこの完了の「タ」なのだ。

ところで、ここで疑問が湧く。
座面に着いた段階も完了だし、座り終えて立つ瞬間も完了だ。
あれ?どうして2つも完了が存在するのだろう。これらの完了はどう区別すればいいのだろう。
区別しなければ大変なことになる。前者と後者では「座っているか座っていないか」という点において真逆だからである。

実はこの違いこそが、「行為動詞としての「座る」の完了形」と「状態動詞としての「座る」の完了形」の違いなのである。
行為動詞「座る」のアスペクトを図示しよう。

<行為動詞skin(座る)>

――○――○――
将 開 経 完 影

腰 腰 腰 尻 座 
を を を が っ
曲 曲 降 着 た
げ げ ろ く 状
だ る す   態

一方、アルカでは状態動詞が有標である。状態動詞の経過相は行為動詞の影響相に等しいので、esを付けて表す。
例えば座るはskinだが、これは行為動詞である。状態動詞の経過相にするにはskinesにする。
また、状態動詞の無相はofをつけて、skinofとする。

この状態動詞を同様に図示するとこうなる。

<状態動詞skinof(座る:日本語では語形上の区別なし(だから混乱するわけで……))>

――○――○――
将 開 経 完 影

行 行 座 座 座
為 為 面 面 面
動 動 に か が
詞 詞 い ら 暖
の の る 立 か
経 完  つ い
過 了
相 相



表を見ると分かる通り、skinofの将前は理論的に行為動詞の将前・開始・経過をまとめたものに等しい。
また、skinofの開始は、理論的に行為動詞の完了に等しい。
行為としての完了が、状態としての始まりだからである。

行為の完了と状態の開始はちょうど境界にあるので、どちらの領土でもある。
skinofの無相は開始から完了までだが、開始は状態動詞の領土でもあるので、行為動詞から領土を借りてきているわけではない。
逆に行為動詞skinの無相は完了部分で状態動詞の開始と重複するが、あくまで共有の領土なので、間借りしているわけではない。

行為と状態における無相と経過相