・星座の決め方

1:天球を用意する

2:天の北緯60〜90°の30°区間を切り取る。玉ねぎのヘタを包丁で切り落としたような形になる。
3:天の南緯60〜90°の30°区間を切り取る。丸かった玉ねぎが頭と脚を切られ、まな板に乗せやすくなったような形になる。
4:残りの緯度は120°。経度は360°のまま。次はこれを縦方向に9分割する。ひとつあたりの緯度は120°で、経度は40°。

これで第一段階完了。

5:2で切った区間をさらに北緯75〜90°の区間Aと北緯60〜75°の区間Bに分ける。
6:A区間は緯度15°で、経度360°。これを3分割し、A1, A2, A3の区間を作る。各経度は120°。
7:B区間は緯度15°で、経度360°。これを6分割し、B1〜B6の区間を作る。各経度は60°。

AとBにveltis族を割り当てる。veltis族は他の族同様、parna〜erintまで9種ある。

A1:invem
A2:verit
A3:arvekt
B1:alvort
B2:ardilik
B3:veltool
B4:livelm
B5:loonia
B6:madia

これで玉ねぎの上のヘタ部分は命名完了。
次は下のヘタ(南極側)を同様の手順で9分割し、alsiaの組数字の最後であるlevin族をあてがう。
これで18星座埋まった。

次。4で9個に縦割りした区間について。前回は傘のような形にヘタを切り取ったが、今回は短冊のように縦に切った。

8:9つの短冊にそれぞれ残ったalsiaの2番から10番を宛がう。
9:それぞれの短冊について、南極側から北極側まで9個に分け、faifaからerintまでを宛がう。

erinの短冊を例示する。
erin(経度0〜40°の区間=40°。緯度北緯60〜南緯60°の区間=120°。この緯度を9分割し、南から順に命名する)

南緯60〜46:(14°):fianse
南緯46〜32:(14°):belue
南緯32〜19:(13°):erveig
南緯19〜6:(13°):eriel
南緯6〜北緯6:(12°):kernard
北緯19〜6:(13°):eritis
北緯32〜19:(13°):lierva
北緯46〜32:(14°):loone
北緯60〜46:(14°):ulanset

10:以上の操作をprotisまで行い、99天を決める。
11:星座が制定されたアルディアの時代において北極星を含んでいた星座(地球でいうこぐま座周辺)をveigan座とする。南極に南極星はないため、101番目の星は不要。

以上。
星座エリアが設定された。

・なぜもっと単純な分割法を取らないか

11のalsiaと9のifanで99天作るならば、単に天球に11本の子午線と、9本の緯線を引き、99分割すればいいのではないか。
だがそれだと問題が起こる。

1:各区間の面積が不均衡になる。

球をそのように切ってみれば分かるが、確かに99分割した場合、角度はどの区間も平等だ。どの区間でも20度の緯度を持つ。
だがそれは平面ではないため、角度が同じでも面積は変わる。極点ほど区間が狭く、天の赤道付近ほど区間が広くなる。

アルバザードから見たとき天の北極は天頂でも真北の地平線でもなく、女の子が彼氏にキスしようとして小首を持ち上げるくらいの角度にある。
上記の切り方だと、このエリアだけものすごく星座が細分化されてしまい、ヘンだ。
例えばりゅう座やこぐま座が4つも5つも分断されることになる。そのくせおとめ座はそのままの大きさを保つ。

これは土の上に立って空を眺めた時におかしく感じる。
そもそも星座は人間が星空を見て、有意味に感じた星の集まりに線を引いたものだ。どこが天の極だなどとは考えて観察はしない。
ちょっと首を上げた程度のところにある星座だけ異様に細かく細分化する視覚的な根拠は考えづらい。視界に入る夜空のどの部分も人間には同じに見えるので、あるエリアだけ広くてあるエリアは狭いというのは認知上、おかしい。

そこで、角度重視でなく、面積重視にして切る必要がある。
ゆえに、極付近は、たまねぎのヘタと尻尾を切るときのように、横向きに切り落とし、その中でA,B計9個の区間を設けた。
そして極から遠のいて初めて縦向きに天球を切っていった。
こうすることで単純分割に比べ、99エリアの面積のバランスが取れるようになった。

縦に短冊型に切った区間について、赤道付近は12°で切っているが、高緯度になるほど14°になっているのも同様の理由である。
この短冊はどの部分も緯度は40°だが、高緯度の40°と赤道の40°では右端から左端までの距離が異なる。赤道付近のほうが長い。
そのため、緯度については赤道付近のほうを短くし、面積のバランスを保ったわけである。

面積のバランスを保つことで、異様に大きい星座や異様に小さい星座を作らずにすむ。
これは重要なことだ。というのも星座が見える時間帯や角度というのは決まっているからだ。
もしおとめ座が横に4倍長かったら、一晩のうちにおとめ座全体を一望するのが難しくなる。

ところで、A1〜A3の区間だが、ここだけ緯度が15°で経度が120°もあり、巨大なエリアとなっている。
だがこれも面積で言えばおおむね赤道付近のエリアと近しくなる。

ただ、それでもAの区間は広く横に長いと言える。では、それでもなぜOKなのか。
Aの区間は周極星だ。北極星同様、一晩中見える。
どの星が周極星になるかは国によって異なる。日本より高緯度なアルバザードでは周極星が多くなる。
ただ、いずれにせよ北極星は周極星だし、人類の住んでいるほとんどの地域では北極星周りの星も周極星だ。

周極星は一晩中見えているので、東から昇って西に落ちることはなく、単にくるくる回転する。
それゆえ、おとめ座と違ってかなりの緯度があったとしても問題ないのだ。
もしおとめ座が4倍の緯度を持っていれば一晩の間に全貌を見るのが難しくなるが、北極星周りの星座なら問題ない。
そこで、地球でも極に近づくほど、経度の尋常でなく長い星座が現れるわけだ。りゅう座のように。
従ってA区間の経度が長すぎる件については問題がないわけである。

・流れ星

流れ星は封印を逃れたアデルが地球に侵入してきたものである。
ゆえに流れ星は不吉なものである。

・アルバザードと星座

アルバザード人は虫が嫌いである。
蟲族の魔物はlevin列に多い。毒や不潔なものはlevin列に多い。

ところがlevin列は天球玉ねぎの下のヘタの命名に使われるため、アルバザードからは見えないものが多い。
南半球の極付近の星座はアルバザードからは見えないため、「大ムカデ座」などは見なくてすむ。


・周極星を特別視する理由。

そもそもアルバザードから北極星を超えて向こう側が見えるのはこぐま座とりゅう座だけである。
これらはもともとveltisの範囲内なので、アルバザードから北極星の向こう側にあるiires列の星座は見えない。
いや、見えたらまずいのだ。なぜか分かるだろうか。例えばかんむりは夏の星座だからだ。

アルカの星座はうまくできている。erin列は60°で終わってしまい、地球の傘になっている部分はすべてveltis列で表現する。
もしveltis列がなかったら、ケフェウスまではerinで示し、北極星を越えたら急に反対側のiires列になってしまう。
するとアルバザードから見える空にerinだけでなくiiresが入ってきてしまう。
つまり、冬のerinの夜空に夏のiiresが一部入ってきてしまうのだ。むろん夏は逆になる。これはややこしい。
しかし周極星になりやすい北天をveltisでまとめてしまうことにより、erinは冬のみに現れ、iiresは夏のみに現れるようになり、理解しやすくなる。

これは巧くできている。自画自賛だが、アルカは神話性を残したまま、体系的な命名をしており、しかも季節の違いも体系的に表現できており、IAUより優れた体系を持っていると言える。
例えば日本人のほとんどはオリオンが何の季節か知らないのではないか。オリオンは常識だとしても、ほかの星座はどうだろう。
どこにあるかどころか、どの季節の星かも知らないのではないか。アルカの場合、名前だけで位置と性質と季節が分かるというのは、なかなか便利ではないか。
例えば第54天は9で割り算すると雷族(6族)の氷天(9階)と分かる。すると「あぁ、夏の星座で、北緯60°付近の星座か」と分かる。

ところで、アルカの星座は完全にオリジナルであるため、地球の星座とあまりにずれが大きく、地球でいう何座というのは避け、緯度や経度で表現したほうが適切かもしれない。
辞書に何座に相当するという情報を含めようとしたが、それは避けるほうが無難であろう。
なお、緯度と経度は上記を参考に計算できるため、100天の位置をそれぞれ覚える必要はない。

・地球から一度に見える角度は180°を超える。

日本で垂直に立って真北を向いたら、そう高くない中途半端なところに北極星がある。
このときやや首を下に傾け、地平線のほうに眼を向けると、北極星の向こうの高緯度の星座が見える。
きりん座の向こうにこぐま座が見える原理だ。

地球儀を上から見れば分かるが、日本を真北に行って北極を超えると意外なことにグリーンランドに出る。
もし北極星の手前にきりんが見えているとき、こぐまはグリーンランドのほうの星座である。
つまり、日本にいながらグリーンランド側の星座が見えるわけだ。

これは非常に意外ではないか。
日本が夜ということは、グリーンランドはちょうど昼なはずだからだ。
なぜ昼の国の星座が見えるのだろう?

なぜなら、星座はものすごく遠い位置にあるからだ。
こぐまはグリーンランドの雲くらいの高さにへばりついているわけではない。もしそうなら、間違いなく日本から見えない。
ところが実際にはこのときのこぐまはグリーンランド人の頭の旋毛の方向の、遥か遠くのところにある。
だが地球からあまりに距離があるので、日本からでも見えるのだ。

サッカーボールを手に取って考えてみよう。
ボールを地球に見立て、日本っぽいところを適当に作り、人差し指を置いてみる。(地軸の傾きは捨象する)
グリーンランドはボールのてっぺんを超えた向こう側だ。もしグリーンランドの雲に星座が張り付いてたら見えないという意味が分かるだろう。
でも実際の星座はボールからはるか遠く、そうだな、今の貴方がボールを持って立っているとしてたら、首をぐーっと挙げた天井くらいのところにある。あ、首はまっすぐね。左右には向けない。
きっとこのとき天井の染みや模様が見えることだろう。それが現時点でのこぐま座だ。
そう。だ か ら 見 え る の だ。

つまり地球から北緯90°以上の、向こう側の北緯まで見えるということだ。
これは当然南半球でやっても同じ。従って南緯90°に加え、地球の反対側の南緯90°付近も見えるということだ。
例えば夜中の0時にフランスで北を見れば、北緯90°以上が見える。
それを確認したらどこでもドアで一瞬にしてニュージーランドに行き、南の空を見る。すると南緯90°以上が見える。
ということは合計で180°+α見えるということになる。

このおかげで、星座の季節において語弊が出てくる。
子どものころ、理科で習ってこんな混乱はなかっただろうか。
オリオン座は冬の星座。うん、確かに夏には見えない(ほんとは昼に見えてるんだが、太陽の方向にあるので見えない。また、日本はそこそこ低い緯度なので、冬以外の季節でもかろうじて見れる)

一方、カシオペア座は秋の星座。
うん。だが待った。なぜ秋の反対の春にカシオペアが見えるんだ?
フランスのマルセイユで11月30日に北西の高いところにあるカシオペアだが、ちょうど半年経った6月2日に北東の低いところに出ているではないか。
「あっるぇ〜?先生はカシオペアって秋って言ってたけど、あれカシオペアなんだよなぁ。なんで??今6月じゃん?」

これは地球から180°以上見えることに起因している。周極星、極付近の星座ではこういうことが起こる。
顕著なのはこぐま座だ。北極星を含む星座なので、年中見える。
だから、アルカではこういう年中見えるような星はできるだけ季節の星にしない。
周極星付近はveltisやlevinという独自の列を作る。これらは周極星座を表す列であり、季節を表す列ではない。
季節は残りのerin〜protisの列で表現する。
そう、従ってアルカではalisiaの11列のうち、頭と尻尾の2列を周極星座に使い、残りを季節の星座に使うのだ。

・数学的な美しさ

メル暦以来の数学的な美しさを感じた。天文と相性がいいのか分からないけど。
北の周極星周囲をveltisで9分割し、南のほうはlevinで9分割する。
alsiaは11種だが、これで2種減るので残り9種。

9種で緯度±60°の丸い切り株を切るわけだが、ここでも9分割になる。
9分割された短冊を今度は横に炎天から氷天まで9分割。
切り株は9*9=81区間に分かれるわけだ。
その上、これらをすべて足した合計が99天。
元は11と9なんだが、組み合わせによって9だらけになる遊びが面白い。

そして99では座りが悪いため、最後に1を加える。
だが99区間できっちり切られているので、どこに加えればいいのか分からない。
しかし北極点があるではないか。ここを100天目にすればよい。
では南極点は?と思うが、南極星はないのでスルー。101という汚い数にならずにすむ。

ちょうど100天目がみかんのてっぺんの「ぽっち」みたいになっていて、地球が果物に見える。
非常に、面白く区切りのいい数の仕組みでできている。心地が良い。
9分割が連続し、99天になり、1ちょうど加えて綺麗に100。気分がいい。


・欠点

どのエリアも横長の四角形になる。
星座を決めるときに横長の星座ばかりになるのは少し面白くない。

もちろんカット方法を変えれば縦長の四角にもできた。
だがあえて横長の四角にした。なぜか。

テレビや映画館の銀幕を見ていて思うのだが、縦より横のほうが長い。
雑食の人類は横長の視界を持っているためだろう。これが草食だともっと広くなる。

星座を見るときの視界は横長だ。だから星座のエリアも横長のほうが自然だ。そのほうが認知しやすくなる。
というわけで横長にした。とはいえ、14°に対して40°は流石に無理があるなと思っている。
14°の20°くらいにしたほうがよかったかなと。

しかし、星図を眺めているうちにそうでもないかと思うようになった。
けっこう星のないエリアというのはあるものなので、14°の20°くらいだと目立つ星のないエリアができてしまう。
人間は肉眼で6等星より上は見れないので、14°の20°エリアだと星座がない可能性がある。
そういうわけで、14°の40°でいいかと思うようになった。

・基準点は?

切り方は分かった。だがどこを基準点として星図を作るのか?
答えはアルデバランなのだが、この結論を出すには長い問答があった。
難しいのを覚悟でジャンプしてくださいませ。

星図の基準点