不定量アルカの不定量

上記を参照にした上で、表題の疑問が湧く。

1:すぐ(1〜5分)
2:ちょっとしたら(5〜30分)
3:あとで(30〜2,3時間)
4:こんど(2,3日〜数カ月)
5:いつか(1年〜∞)

この表はネイティブによって変動がある。それは分かる。
かといってこの表とまるで違う表をあげるネイティブもいないだろう。
ではおおむね30分を超えた段階で急に不定量が大雑把になるのはなぜだろうか。

さて、それでは不定量とはどのような場面で使うか。
「ちょっと待って」「あとでかけなおす」「ちょっとしたら行くよ」など、用法は様々だ。
が、見ていると、相手を待たせるケースが多くないだろうか。
あるいは「すぐいこう」など、勧誘表現で使うことが多いようだ。つまり、待つか待たせるかが多いようだ。

人間、待たされるのは嫌いだ。待たせるのも気が引ける。
かといって、日常のことはたいてい何分で終わるか細かい予想がつかない。
10分と言っといて15分かかったら、相手は「おい、まだかよ?」と言うだろう。
「あとちょっと」と言っておけば幅を持たせられるので、円滑にコミュニケーションできる。
10分か15分かの差は5分しかないが、分母が小さいので5分が大きく感じられる。
だからこのあたりの不定量は小刻みである必要がある。

ところが30分を超えると分母が大きくなるので、30分でも35分でも大差なく感じる。
また、待たせる方としても、30分もかかる作業が実際には35分かかるかもしれないことなど予測できない。
10分か15分かは予想できるが、30分か35分かの予想は困難である。時間がかかる作業ほど作業量も増えるし、不確定要素の出る確率が高いからだ。

となると、30分以上はもう5分刻みでなく10〜30分刻みの感覚になっていく。
30分の次は例えば45分か60分という感覚だ。が、それならそもそも「1時間くらい」という具体的な表現を使えばよい。もはや不定量の出番はない。
不定量というのはそれを表わす適当な単位がないから使うわけであって、60分程度の不定量ははじめから「1時間くらい」と言えばよい。
それでおそらく30分を超えると、急に不定量が大雑把になるのだと思われる。
30分を超えると、今度は30分刻みに「1時間半くらい」などと述べていくようになるので、不定量は必要なくなるということになる。