言語に例外はつきものである。
人工言語も、オクシデンタルのように、使い勝手を向上させるために例外を作ることがある。

アルカでは動詞の類別は行為と状態しかない。
だがすべての動詞が両者を持つので、実際は覚える必要がないくらいだ。

しかし、この理屈でいくと、I like himはan siinas laになる。
I am hereはan xas atuになる。
I have sistersはan tiles amelになる。

そう、極めてよく使う動詞の中には、状態動詞の経過相として利用する頻度のほうが圧倒的に高いものがあるのだ。
だがアルカでは行為が無標。状態動詞の経過相には(e)sを付けなければならない。しかしこれは面倒。

そこで講じる策は2つ。
1:面倒なのを耐えて、理論優先。
2:理論に例外処理を設ける。

――楽なのは1だが、あとあと実用的なのは2だ。
そこで、アルカでは「一部の動詞は(e)sを付けなくても状態動詞の経過相を表わせる」という規則を設ける。
その動詞はこのとおり。

・存在動詞:xa, mi
・所有動詞:til, si
・心理所有動詞:naのみ
・定義動詞:eks, mols, gartなど
・心理動詞:siina, tiia, sin, varae, hatia, kafなど、siina型の動詞

ようするに、状態動詞の経過相の頻度が圧倒的に高く、しかも行為動詞の無相として使う頻度が極めて少ない場合に、この例外となるわけである。

定義動詞については詳しくは定義動詞参照。

感情動詞であるvem, jo, emt, nauなどは例外に含めない。
感情動作動詞であるnax, asex, kuklなどは例外に含めない。
いずれも行為として使われる機会がそこそこあるため。

所有動詞は、「持つ」という意味では所有動詞ではないので、行為動詞が無標になる。
従って、「持つ」という意味では、状態動詞が無標にはなれず、(e)sを付けねばならない。
具体的には、「鎌を(手に)持つ」はtil markで、「鎌を(手に)持っている」はtiles markである。
後者をtil markとすることはできない。所有ではないからだ。

英語と違って知覚動詞は特別扱いにならない。
inは正確には見るではなく「目をやる」と覚えるとよい。
視線が当たった瞬間がinikであり、見ている状態がinesであり、目を離したときがinof tookになる。
思えば日本語の「見た」もinikのときもあればinof tookのときもあり、よく区別ができなかったりする。

siinaやxaなどの例外動詞は状態動詞の経過相を無標にするとした。
行為動詞の無相は状態動詞の経過相xasと入れ替える。
従って、siinasで「好む」。
入れ替わるのは無相だけなので、「好きになりだす」はsiinas kitではなくsiina kitでよい。

レインは座っているか